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私が志麻を嫌っている理由その２としては奴の親が敵対している国家研究員の所長という観点からだ。そのためなるべく深く探りを入れて欲しくないから私は距離を置こうとしている。
「なぁ、それおもろい？」
休み時間が暇になるため適当に借りてきた心理学の本を読んでいると私の机に両腕を置いて下から顔を出した志麻。なんでそんな所にいるんだ。
「露骨に嫌そうな顔しなくてもええやん」
「察したなら早くお仲間のところにでも行けば？」
「生憎全員用があっておらんわ。だから俺も仲間に入れて？」
じゃあ勉強してろよ、そう思う節もあったがコイツ学力はクラスでトップレベルだったと改めて思い返し何も言わずに本へ視線を戻すと横から志麻が来て「ほうほう」と勝手に見始めた。距離の詰め方が極端すぎる。
「人間心理学ねぇ。進路はカウンセラーなん？」
「勝手に憶測立てないでくれない？」
「ははっ、悪い悪い。それにしても心理学に興味あるんか？」
「…そうだけど悪い？」
不満げにそう言葉を返せば「悪くない」と志麻は隣に誰もいないことをいいことに席に座って体をこっちへ向けていた。興味っていうか人間のことをもっと知るためにこうしてるんだけどね。
けれども将来が安定していて進路も決まっている彼は私からしたら憎たらしい。将来って言葉すら私は語れないというのに。
「そういやAは毎回昼飯食っとらんよな？なんで食べないん？」
「別に、昼ごはん食べなくても生きられるでしょ」
「健康に悪いやん」
それは人間としての過程でしょ。私は吸血鬼だから何十年食事を取らなくても生きていける。心臓を銀の玉で撃ち抜かれなければ全然余裕で生きられる。
だから正直余計な心配はいらない。
「そんなことしとると＿＿吸血鬼に喰われるで？」
突然放たれたその言葉に視線だけを向ける。すると彼はニコリと笑うだけで何も動かない。辺りがやけに静かになって雑踏の方が音としては大きいはずなのに遠くから聞こえてくる。
「最近多いんよ、ここら辺で倒れてる人間が。それも大半が首元に噛み跡みたいなのが残ってるとかなんとか」
「…そんなの迷信でしょ」
私はその場から立ち上がり出入口に向かって歩き出した。顔には出さないように教室を出て曲がり角へ向かって自身の姿が隠れた所で息を吐いて胸ぐらを掴む。
人間のくせして脅して、もしかして私の反応を見てる？
人間に対して初めて恐ろしさを覚え、肝が冷えた。
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