パラダイムシフト＿Sm ページ19
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陽の光が綺麗だなんて一度も感じたことが無かった。
試験管に入った透明な液体状の薬品。私はコルク蓋を開けて喉の奥へと流し込み口の端から少し垂れた液を手の甲で拭った。
これは母親から飲むようにと言われて研究所の人間に殺されてしまう前に渡された調合薬品、いわゆる吸血衝動を抑えるための抑制剤だ。財産やデータなど全て渡されて数年前に見つけた誰も寄り付かない古びて荒れ果てた屋敷の中で私は一人目立たない生活していた。
＿＿私は吸血鬼。今は数少ない吸血鬼の末裔。
この世界に吸血鬼が存在するということはかなりレアらしい。希少価値が高く国家が管理する研究所の職員に見つかってしまえば研究対象として捕獲され実験用具として隔離されてしまう。
本当、この世の中で都合って言葉が一番嫌いだ。
私はこの場所に住んでいることがバレないように日中は動きながらも一番紛れ込みやすい人間の高校へと通っている。勿論高校に提出している情報や資料は全て偽物。
制服に袖を通しひび割れた鏡に自分の体を向かい合わせにして念入りに確認を入れてから住処を出た。
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「おはようAちゃ〜ん」
学校に着いた途端鉢合わせになる紫頭のチャラ男＿志麻。私は勝手に土足で距離を詰めてくるコイツのことを心底嫌っていた。
入学当初に初めて姿を見た時は顔が整っている方だなとは思っていたが短期間でクラスの中心人物で人気者にまでカーストを登り詰めるとは思わなかった。そしてなんの利益があるか分からないが私に無闇矢鱈に近づいておちゃらけながら話してくる。とても厄介だ。
私は無視をしてその場を何事も無かったかのように通り過ぎれば後ろから「感じ悪すぎ」と男子と女子の両方の声が聞こえてくる。だったら最初からかまってちゃんしなければいいでしょ。
まともに耳を傾けても痛くなるだけだと思った私はいつもの後方の橋の窓側の席へ座ってなるべく影を消した。
「志麻がわざわざ挨拶したのにあの態度は酷くなぁい？」
「あのなぁ、わざわざって言い方悪態つきすぎやない？」
「けどさアイツ入学した時から人を寄せつけない態度とるし気にすんなよ。目を合わせただけでもナイフで殺傷してきそうな勢いで怖いし」
「ん〜…確かに見かけは、な」
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