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34話 ページ13

リビングに戻った時には96猫さんは寝てしまったようで、Aがひとりでもくもくと僕のパソコンをいじっていた。こちらには気づいていない様子で随分と集中しているようだ。音をたてないように脇を通り抜けそらるさんとさかたんを部屋に案内し、リビングに戻ってもまだいじっていた。気になって後ろから画面を覗いてみるとすぐに気づかれて隠されたものの見えた「うたう」の文字。

『ぅえっ!? 優希さん!!? あ、上がってたんですね!!』

誤魔化すように目を泳がせる彼女。なにかやましいことでもあるのか必死に画面を隠している。

「うたうのこと調べてたの?」
『な、何のことですか?』

あくまでしらを切るつもりのようで話そうとしない。埒が明かないので半ば無理矢理にパソコンを奪い画面を見ると見間違いではなかった。そこにはうたうのと書かれた彼女の行方について議論されている自由発言サイト。どうして彼女がこんなものを見ていたのか。聞いてみるとわあぁと少し慌てたもののすぐに彼女は落ち着いて僕に向き直りへらへらと笑いながら僕にとってはとんでもないことを話し始めた。

『彼女ってほら、何も言わずに突然投稿辞めたじゃないですか!ファンに対してそれは失礼だったんじゃないかなーって、思いまして!ほら、ずっと応援してくれてた人たちに黙って失踪だなんて──』
「ぼくの好きな歌い手さんのこと、そんな風に言わないでよ」

思わず大きな声を出してしまった。夜中だから抑えなければいけないのに、どうにもこの口から零れる音は止んでくれない。びくりと肩を揺らし表情を強ばらせた彼女に僕は続けて言う。

「何か理由があったかもしれないじゃないか。そりゃあ突然投稿を辞めたのは悲しかったしショックだったけど歌い手だって人間なんだから理由があるはずだろ。たしかにAの言ってることは一理あるかもしれないけど、でも彼女は絶対そんな人じゃない。会ったことも話したことも無いけど活動中もファンのことをずっと大切にしてたし、いくらAでもうたうのこと悪く言うのは許せない」

自分でもビックリするほどすらすらと言葉が出てくる。僕はそんなにうたうのことが好きだったのか。ごめんなさいと消え入りそうな声で呟く彼女に、やってしまったとは思ったが、しかし不思議と後悔は無かった。そのまま一言も喋らずに部屋を出た僕に彼女が優しげな笑みを浮かべていたなんて知るはずもないまま。

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がま由(プロフ) - 真夏さん» はじめまして!!誤字のご報告ありがとうございます、確認し次第訂正させていただきます!閲覧、コメントありがとうございました! (2017年9月13日 6時) (レス) id: ceecbc770e (このIDを非表示/違反報告)
真夏(プロフ) - 出来る限りの更新、楽しみにしています!二回にわたるコメント失礼しました。 (2017年9月11日 21時) (レス) id: 14f8e7718b (このIDを非表示/違反報告)
真夏(プロフ) - 初めまして。初編からここまで一気に読ませてもらいました。一つだけ、名前反映がされていないです。。『ゆう』と混ざっています。。作者様自身で読み直して頂けたらと思います。これからの内容楽しみです! (2017年9月11日 21時) (レス) id: 14f8e7718b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:がま由 | 作成日時:2017年8月15日 4時

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