【センラ】社畜リーマン歌い手はお腹が空いているようです

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「そ、んな」


「僕、もっとAさんとの距離、縮めたいです。

だめですか」



あからさまにしょぼんとして私を掴む手を緩ませる。
こんなの…



「ず、ずるいですよ折原さんんん」



顔が熱い。ほんのり涙が出てきて視界がぼやける。



「ずるい、ずるいです。そんなのだめって言えるわけないじゃないですか…！！」


「え、いいんですか」



ぱあと顔が明るくなり、私を見上げる。
こんなにかわいい年上の大人が他にいただろうか。



「い、いいです…けど」



悔しい。だが断るわけにもいかない。
折原さんの申し出にしぶしぶと了承を出した。



「わーいありがとうございます」



にこにこと笑う姿はまるで子供のようだ。やはりかわ…



「じゃ、」



ガタ、と椅子がずれる音がする。低い位置から自分を見上げていたかわいらしかった男性は立ち上がり、いつの間にか私を見下ろしていた。
するりと彼の右手が私の髪をなでる。



「Aも僕のこと、名前で呼んでくれへん」


「え」



前言撤回。
先程までのかわいさはどこへやら。にこりと妖艶に笑う彼の表情はやはり綺麗で、かっこよくて。



「ね、だめですか」



耳元に近づいてそっと呟く。
その声が身体中を、頭の中をぐるぐると巡る感覚に襲われた。



「〜っだ、だめです！！！」



そんな彼の雰囲気にやられ、そう答えるので精一杯だった。

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