検索窓
今日:31 hit、昨日:3 hit、合計:33,429 hit

手掛かり ページ23

中也が居る場所…

わたしは知り得る全ての場所を探していた。

我武者羅にヨコハマの街を飛び回って居た。


しかし、中々見付からない。

そして、わたしが向かったのはあの喫茶處。


――――カランカラン

心地好い鈴の音を立てて扉が開いた。


「いらっしゃいませー」

澄んだ綺麗な女性の声が聞こえてきた。


あの女性だ。


パンダエプロンをした住所の書かれた封筒を渡してくれた女性。

「あ、あの…パンダさん…」

わたしが声を掛けると、プッと女性は吹き出した。

「あれれ、パンダさんって私の事?」

「あっ!済みません…そう云う意味じゃ…」

なら、如何云う意味だ。と自分でツッコミ乍らわたしは次に繋ぐ言葉を探していた。


「ふふ、良いんだよ。君、中也の彼女でしょ」

「な、なななな、何を!!!」

突然彼女だと言われてわたしは顔を赤くして否定した。

「かぁいいねぇ…照れちゃって」

「て、照れてなんか…!!」

と、叫びながら、思う。

「中也さんは…居なくなっちゃったんです。

だから、わたしは本当に彼女じゃないんです」

中也の彼女になる前に居なくなったから

「………………」

「中也さんの居場所、知ってますよね」

「……………」

パンダさんは何も云わなかった。沈黙に痺れを切らしてわたしが言葉を続けようとすると、パンダさんは諦めた様に笑顔を見せて喋り出した。

「どうして…判ったの?」

「パンダさんは、パンダさんじゃ無かったんですよね」

わたしはエプロンに縫い付けられたパンダを指差して云った。

「気づくの遅いよぉ。そう、これ白と黒のわんちゃんだね。かぁいいでしょぉ」

パンダさんは自慢気に笑った。


白と黒のわんちゃん。
最近何度も見たものだ。

そう、あのメモ用紙。

封筒の中、今朝机に置いてあったメモ用紙。

全部、白と黒の犬が描かれていた。

このエプロンと同じ。


だからわたしは、彼女が中也の居場所を知っていると踏んだのだ。


「中也さんの居場所、教えて下さい」

「うーん、本当はダメって云われてるんだけどね。私に気が付いたから、特別に教えてあげるよ」

そう云うと彼女は着替えてくる、と控え室へと走っていった。

矢張り彼女が、知っていた。

中也の居場所に関する手掛かりが掴めた事に一先ず安堵を覚えた。

少しするとパンダさんが戻ってきた。

白いパンツに黒い半袖。

やっぱり、パンダみたいな服装だと思った。


「さて、行こっか」

「はい」

わたしは中也の居場所へと向かう。

秘密→←居ない



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
53人がお気に入り
設定タグ:文スト , 中原中也 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。