隠し事 ページ14
特に理由は無い。
しかし、わたしの足は自然と中也の家へと向かっていた。
昨日ぶりのそのマンションに辿り着いた時は、中也に会えると気分が大層興奮していた。
──ピンポーン
チャイムを押して待っていると、ガチャリと玄関が開いた。
「よォ、昨日は帰っちまって悪かったな」
中也が出てきて、後ろ手で扉を閉めた。
「その後太宰さんにお逢いしたけど…」
「彼奴に…逢ったのか…?」
信じられない様な顔で、中也は此方を見た。
「うん、一寸怖かった」
そう云って笑って見せた。
「そうか…」
中也はわたしの方を見ていたが、返事も空返事で、心は何処か他の所を見ている様に感じた。
「あ、のさ」
「何だ?」
「その、太宰さんと逢った時の事も話したいからさ、
その、良かったら…中也君のお家、入れて呉れない…かな?」
上目遣いでお願いをする。
「…わ、悪ィ、今は一寸…」
中也の反応で確信した。
何か、隠している。
「ダメ、なの?」
「否、駄目じゃ無ェが…」
「じゃあ!」
「……駄目…だな」
「…何で?」
「部屋が汚い」
「別にいいよ。何だったら掃除もしてあげるよ?」
「未だ寝足り無い」
「わたしが居ても寝ていいよ?」
「朝御飯、食わなきゃ…」
「作ってあげようか?」
──そんな言い訳…通らないよ。
「ねぇ、教えて…」
──ブーブー
中也はやっと扉を開いて家の中に入っていった。
わたしはそれに着いていく。
ファアと暖かい風が部屋に入ってきて、カーテンレースが揺れていた。
「其処等辺、座っとけ」
中也はソファの辺りを指差して、キッチンへと向かった。
「待って、わたしも手伝う」
そう云うと中也は逡巡を巡らせ、
「有り難とよ。此方だ」
とわたしを手招いた。
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時