【東京喰種】僕の声を聞いて【金木研】

96*.激痛 ページ3

カネキ君が振り返る。何も言わずにじっと、私の言葉を待っている。


貴「あの……私も、連れて行って……。力にはなるか分からない。でもいつまでも店長に甘えてちゃいけないと思うし、私自身も強くなりたい。それに……カネキ君には助けてもらってばかりだから、今度は私が助けたい」


カ「………」


貴「私に出来る事なら何でも……「ダメだ」


ずっと黙ってたカネキ君が放った、その3文字。


それだけでも十分な戦意喪失になったが、それでも私は諦めないで続けざまに言う。


貴「……足手まといになるかもしれないけど、私はカネキ君の傍にいたい……体術だって頑張る、調べ物だって雑用だってするから……！」


カ「……Aさん」


久々に彼に名前を呼ばれた。それなのに、こんなに苦しくて、今にも泣き出してしまいそうになる。


カ「自分でも分かってるでしょ。……貴方が来た所で出来る事は何も無い。正直………迷惑なんだよ」


ナイフを突き立てられたような痛みが胸に走った。そこから、じわじわと毒が身体中を蝕んでいく。


いつから私にとって彼の言葉ひとつが、こんなに重みを持ったんだろう。


貴「前から……思ってたんだけど……私、カネキ君に嫌われるような事したかなぁ……？」


うっかりしたら涙が零れてしまう。どうしよう、立っていられるのがやっとだ。苦しい苦しい苦しい。


カ「……元々、貴方を好きになった事なんてないですよ」


貴「え………」


頭を金属バットで殴られたかと思った。今まで抑えてた感情が、とめどなく溢れてくる。


カ「今まで貴方を助けたのなんて、人としてただの倫理観にすぎない。別に貴方に対する好意ではないし、そもそもどうだっていいんだ」


心がどんどん錆び付いていく。


貴「……嫌いでも……いいから……何とも思ってくれなくていいから……もう独りにしないって、約束してくれたじゃない……！！」


カ「………何の話？」


貴「カネキ君の……バカッ……どうして皆、独りにするの……！？絶対約束は守るって言ったのに、そんなもの全部嘘だった……期待させといて裏切られるなら……皆なんて、カネキ君なんて信じなければ良かった！！！」


カ「………」


貴「……独りはもう嫌なのに……」


離れていかないで、カネキ君。


貴「助けてくれなくて良かった……あの時に、出会わなければよかった！！」


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