110*.落着 ページ18
カ「……帰ろう、Aさん」
貴「うん……」
“帰ろう”。この至って普通に聞こえる言葉が、なんて幸せな響きを生むんだろう。顔から自然と笑みが零れた。
カネキ君は早くしないと風邪ひいちゃうよ、と言って私に向けて手を差し出して来る。
その手を掴んで、パシャパシャと2人で水たまりを踏みながら私達の帰る所へ走った。
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___私達は濡れたまま、カネキ君宅へと入って行った。
中に入ると、カネキ君はすぐにタオルを持ってきてくれた。
カ「はい。これで拭いて、今すぐお風呂入って。服は僕のが置いてある、それ着ていいから」
カネキ君がせかせかと私には目もくれず言う。
あれ……?さっきまでの甘い空気は何処に……?
私が呆気に取られてそのままじっと立っていると、カネキ君が横目で私を見る。と思うとすぐに視線を逸らし、それから口元を隠して、小さな声で呟くように言った。
カ「そのままだと目のやり場に困るから……早くして」
貴「えっ??」
私は自分の服に目をやる。雨に濡れたシャツが貼りついて所々肌が見えている上、下着は透けていた。
貴「うぇええええ!?今すぐ入ってきまぁす!!!」
私は人生で1番じゃないかと思う程、全速力で風呂場へと直行した。
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貴「ふぅ……あったまった……」
スン、と鼻をすするとカネキ君の優しい匂いがする。
落ち着く……。
でもやっぱちょっとデカいなぁ。改めてカネキ君は男の子なんだと再認識する。
貴「……そういえば、私達って付き合ってるのかな……」
お互いの気持ちは知れたけど、付き合おうとは言われてないし……
「……僕は、てっきりそうだと思ってたけど」
後ろから突然聞こえた声に私は驚いて肩をすくめる。振り返ると、壁にもたれて腕を組む彼がいた。
貴「あ、カネキ君!?聞いてた……?」
カ「喰種の聴覚舐めないでよ。……何、Aさんは違うの?」
少し不安そうにするカネキ君。私は頭を振って大いに否定する。
貴「いや、そうじゃなくて!こういうの、早とちりしたら恥ずかしいし!」
カ「別に恥ずかしがる必要ないんじゃない?……好き同士な訳だし」
少し照れて言うカネキ君を見て、私も恥ずかしくなり俯く。私が手に持っていたタオルで口元を覆いながら、でも……とまごついてるのを見ると彼は、
カ「__じゃあAさん。僕と、付き合って下さい」
クスクス笑いながら彼が近づいてくると、彼は私に3度目のキスをした。
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カルパッチョォ/* - いや、今更過ぎてごめんなさい。なんですが、、翡翠様の作品にどハマりしております笑そして、大人と苦味のお話よ、、好きすぎて死ぬかと思いました笑笑金木君が照れててカワエエって思いました笑 完結するまでどんなことが起きるのやらグヘヘヘ、、 (2021年11月9日 18時) (レス) @page38 id: d7a56dec6a (このIDを非表示/違反報告)
翡翠@新垢作りました(プロフ) - 月柱るうなしさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!不定期更新ですが、完結はさせますので思い出した時にでも見て頂けると嬉しいです…! (2021年9月8日 5時) (レス) id: 63102a6d0d (このIDを非表示/違反報告)
月柱るうなし(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!更新頑張ってください!夢主の赤ちゃん扱いwwwwwwwww (2021年5月4日 19時) (レス) id: 1c76c3e1bb (このIDを非表示/違反報告)
翡翠@新垢作りました(プロフ) - ソマリさん» なんて嬉しいお言葉!ありがとうございます!!これからも手が止まらなくなるお話書いていけたらいいなと思いますので、よろしくお願いしますね! (2020年6月7日 12時) (レス) id: 51877158f0 (このIDを非表示/違反報告)
ソマリ - 面白くて一気読みしました! 続き楽しみにしてます! (2020年4月12日 12時) (レス) id: b11eed02a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠@新垢作りました | 作成日時:2019年8月24日 23時