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まるでビー玉のような黒い目がじっと4人を見つめ、枯れ木のように痩せていたはずの子狐の体が、いつの間にかふっくらと肉付いて、耳がぴんと立っていた。
そして、ホッキョクギツネのように真っ白とした毛に覆われた小さな口が開いた。
「あつし、ちゅうや、おさむ、りゅうのすけ やさしい すき」
まるで言葉を覚えたての幼い子供のようにたどたどしい声で狐が喋っているその光景に4人は目を見開いた。
黒い瞳に、人間めいた意思がその狐にはあり、その目が4人からダイジンの隣にいたAに移ると、突然に細められた。
「おまえは じゃま」
『———!』
Aが座っていたベンチには兎のぬいぐるみが横に倒れ、そのすぐ目の前でダイジンがその兎のぬいぐるみに肉球の着いた小さな手で仕切りに触りながら、Aを呼んでいた。
「嘘だろっ!?」
「どこに行ったんですか!?Aさん!」
中也と敦が中心になって公園内で大声を上げながら焦っていると、ダイジンが駆け寄ってきて、中也の服を掴んで指を指した。
4人がその手の先に目を合わせると、敦が持っていた兎のぬいぐるみが手をついて、ベンチの上に器用に立った。
兎のぬいぐるみはバランスよく立ち上がると、2つの瞳でじっと4人とダイジンを見た。
そして今度は、自分の体を確認するかのように、顔を下げて自身を見た。
『何、これ……』
「「「「はぁ!?」」」」
「えっと……Aさん?」
『あの皆さん……私は……?』
兎のぬいぐるみがそう言うと、中也の近くにいたダイジンが兎のぬいぐるみの姿になったAの隣について、狐に向かって威嚇の声を上げた。
『あなたがやったの!?』
ぬいぐるみが———Aが、気色ばんで叫ぶと、狐はテーブルからひらりと飛び降りた。
『ちょっと、待ちなさい!』
Aは兎のぬいぐるみの姿のままベンチから勢いよく降りると、自身を変えた狐を追いかけて走った。
その様子を見ていた4人は、ダイジンが中也の肩に乗って「おいかけて」と言うと、4人は全速力で狐とぬいぐるみになったAを追い掛けた。
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虚無虚無ぷりん - すずめの戸締りも文ストも好きなので嬉しいです!応援してます! (2023年2月2日 11時) (レス) @page6 id: d13357cef5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - うわぁ、待ってください。好きです((応援してます! (2023年1月31日 17時) (レス) id: 9d95f1ffe8 (このIDを非表示/違反報告)
nemuruneko0315(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2023年1月30日 15時) (レス) @page2 id: bad30b3ef3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シフォンヌ | 作成日時:2023年1月30日 0時