12話 ページ14
今日は連絡が来るんだろうなと踏んでいたから、Aの曲を聴いて寝ずに待っていた。
そろそろ投稿するとは聞いてたけど、本当に最高だ。
俺を導いてくれたAの曲。
どれも俺にとっては宝物みたいに思える。
歌い手を初めて間もなかった頃、右も左も分からなかった俺に『りぶ!君いい声だね!なぁ、俺とコラボしない?』そう言って優しく手を取ってくれたAがいたからこそ今の俺がある。
数年前から変わらない、Aは俺の全てだった。
夜中の2時になってようやく
A今から来れない?
とLINEが来た。
Aは不安や心配を誰にも見せず隠して飲み込んで、耐えて耐えて、本当に耐えられなくなった時にしか俺を呼ばない。
まあ、俺以外にはそれすら伝えないのだからまだましな方か、と自分を納得させる。
急いで支度を済まて車をに乗り込みAの家に向かう。
前に一度、『来て欲しい』と言われた時にちょうど重要な仕事をしている最中で、どうしても抜け出せなかった時があった。
仕事を終え急いでAの家に向かったが、連絡が来てからもうすでに数時間経ってしまっていた。
Aは1人の部屋で声を殺して泣いていた。
耳を塞いで小さくうずくまり涙でシーツを濡らすAの姿は、痛々しすぎて見ていられないものだった。
『ごめんごめんなさい...』
「大丈夫、大丈夫だから。」
震える背中をそっとさする。
その日は一晩中泣きじゃくるAを布団の中で抱きしめ続けた。
泣き疲れてようやく眠ったAはボロボロだった。
もうあんな思いは絶対にさせたくない。
急いで玄関の鍵を開けると、珍しく散らかったリビングと転がるお酒の瓶。
なんだこの量。
この量を1人で飲んだの?
リビングに居ないってことは...
階段を上がり、寝室に辿り着く。
扉を開けると真っ白なシーツが丸く膨らんでいる。
「やっぱりここにいた。
リビング散らかってたけど、まさかあの量のお酒1人で飲んだんじゃないよね?」
『...りぶ』
涙の膜で歪んだAの不安げな瞳が俺を捕らえる。
『そらるとか...来てた。』
「なるほど、顔真っ青だよ。大丈夫?」
もともと真っ白なAの肌が、白を通り越して青くなっている。
『ん...だいじょぶ』
ああ、俺の聞き方が悪かった。
Aは大丈夫だったら絶対に俺を呼ばない。
1241人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきうさぎ - コメント失礼します。作者様の負担になるようでしたら話は別ですが、僕は皆でハッピーエンドが良いと思います。 (2020年9月20日 1時) (レス) id: f935ff1209 (このIDを非表示/違反報告)
あお - 個人的にはhappyendが好きなのでhappyendが読みたいです…! (2020年6月15日 18時) (レス) id: 57a51dc74d (このIDを非表示/違反報告)
匿名主(´・∀・`) - 初めまして、失礼します。個人的にはhappy endが良いんですが…一回何らかの endで完結させてしまって、その後に場面分岐的な終わり方にすれば良いのではないか。と考えております。作者様に負担が掛かってしまいますし、上からで申し訳ないんですが…考えて頂ければと (2020年6月13日 21時) (レス) id: 610e5b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
ペン - 初めまして、今日は。 秘かに読まさせて頂いてます。今更なのですが、 happyendが良いと思ってます。体調に 気を付けて更新頑張って下さい。 (2018年6月24日 11時) (携帯から) (レス) id: c5e8935b6a (このIDを非表示/違反報告)
にょむさん - 個人的にはHappy Endがいいです! (2018年6月17日 22時) (レス) id: c18b2f6fe2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紺碧 | 作成日時:2017年12月3日 21時