【 歌い手 】ガチ恋こたぬきの義兄は 、あほの方でした 。

9 ページ10

うらた さいど 、


「 大好きな人って思わなきゃいいだろ 、ただのお前の兄の友達 。」



いくら話しても 、開けてくれようとはしない 。

最終手段は用意していたものの 、ちょっと強引すぎだと思い 、放棄した 。


どうしたものか 、どうしても彼女を助けてあげたい 、という気持ちが強い 。



そう思っていたとき 、扉が開いた 。

驚いて 、彼女の姿を見る 。
吐きだしたものは 、流してしまったのか 、きれいさっぱりなくなっていた 。


目元が赤く腫れていたが 、目線はしっかりと此方を向いていた 。



「 大丈夫 、？ 」



こくり 、と小さく頷く彼女 。
来ていた長袖の服は 、汚れないように折られていた 。



其処からみえるのは 、細すぎる手首 。

やっぱり 、白米だけだと栄養が偏るんだろうな 。しかも 、あの量だけじゃ 、こうなるわ 。



「 大丈夫だよ 、俺がいる 」



何を言ってるんだろうと自分でも思いながら 、彼女を抱き締める 。


駄目だ 、この人はただのこたぬき 。…… ガチ恋の 。



でも 、" 好き嫌い " で判別されてしまう故に 、過去に何かあったんだろう 。


それは 、話を聞かなくてもわかる 。


そんな彼女を 、リスナーだとか 、こたぬきだとか 、そういうのは抜きにして守ってあげたかった 。

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す