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「あ、山田さん……」
どうも、とぎこちない挨拶を交わす
今、面と向かって思ったけど、あの一件以来私は、お得意様だった筈の彼が苦手になってしまったらしい
「おっと失敬、夫婦水入らずのところを邪魔してしまいましたかな?」
「い、いえ、お気になさらず」
なんて答えながら、中也と握ったままだった手には変な力が入ってしまった
ああだめだ、出来れば中也には、気付かれたくなかったんだけど
握り返してくれる優しさに、甘える自分は本当に弱くて情けないと思う
「それにしてもAさん、貴方はいつ見ても美しいお人だ」
不意に山田さんが、改めて私を眺めて、呟くようにぽつりと云った
「前のドレスも素敵でしたが、今日のはまた一段と似合ってらっしゃる」
「えっと、有り難うございます…」
あくまで紳士な顔付きをしたその人は、もう数歩此方に歩み寄ってから、そっと右の手を私の方へ伸べてきて
中也の手に塞がれてない方の手を、ゆっくり取ろうとした、のだけど
「此奴は俺のだ、触んじゃねえよ」
台詞での牽制と共に、私を引き寄せた中也により、それは叶わぬこととなった
不機嫌丸出しの中也に、「ちょっと」と思わず宥めるような声を掛けてしまう
すると、今度は
「いやはやそうでした、失礼」
中也のそんな行動にも、山田さんは顔色一つ変えないでその手を丁寧に戻した後に
「いやあ、でもね、少し悔しいなあ、何せ私もAさんに目を付けていたものでしたから」
至って同じ調子で、そんなことを話し始めた
「ですからAさんのことは、出来るだけご贔屓させて頂いてたんですがね」
そしてそれは、初耳だった
確かに取り引きの見返りはいつも高く付いた記憶があるけれど、まさか本当に、そんな理由で?
あまり信じられるような話じゃなくて、一方的に気まずいこの場に困り果てる私を他所に
「あの、山田さん、私……」
「ええ判っています、貴方には中原幹部がいらっしゃる……ここは男らしく、潔く諦めるつもりですよ」
掴みどころなく、一人悠長に語らい続ける山田さん
ずっと変わらない、貼り付けたような人当たりの良い顔に、今になって急激に嫌な予感がした
「まあ無論、お二人が
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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