君を振り回したい僕【降谷零】

21、2度目のキス ページ21

Aが、僕をどう思っているのか…分からない。

仕事帰りは必ずポアロへ寄って、僕と一緒に帰って食事をする。
突然、家に押しかけても…僕を迎えてくれる。そこには恐らく、嫌悪感は少しもない。


…だが。


『好き』だとも、『嫌い』だとも。

『抱きしめてほしい』とも、『キスしてほしい』…とも。その声で、1度も聞いたことがない。
あの夜のことすら…Aは、これまで絶対に口にしなかった。



" ただのお隣さん " 。
今のAにとって、これが全てか。

……じゃあ、何故。


そんなに顔を赤く染める？




あんな組織の事さえなければ、僕は。

何も悩まず。簡単に『好きだ』と伝えて。その柔らかな唇にキスをして。
強く抱きしめて、Aの身体の奥深くまで暴いて。……強引にでも

君の全てを、僕で満たしていたと…思う。



今…1つだけ分かるのは。

僕を " 嫌ってはいない " 事実だけ。

『あむぴ』と楽しげに名前を呼ぶAの笑顔は、恐らく

本物だ。


｢…っ、わ、私のこと、バカにして……｣

｢してないよ｣

理性が残っているか、自分でもよく分からないまま。

彼女の後頭部へ手を回して。


ぐっと、僕の方へ抱き寄せた。





｢…っ、｣

至近距離に、Aの顔。
頬も…耳まで真っ赤に染めたまま、ただ僕を見つめる。

そっと、彼女の首筋に指を這わせれば…ドクドクと、脈が伝わった。

唇が触れる直前。辛うじて、僕は踏み止まる。


『……Aさんが嫌なら、しません』。

そう、囁いて…。



彼女に、委ねた。


あの日のように、強引に…キスをされると思っていたはずのAは。
動きを止めた僕に、驚いたように目を見開いていた。


今。僕からは…しないよ。

いずれ、A自身が欲しいのは…本当。だから。


君の嫌がることは、したくない。

良かった。
理性が残ってて…良かった。


そう思った直後。
耳まで赤くしたまま固まっていたAが、僕の頬を両手で包む。

瞼をゆっくりと閉じる様子に釘付けになっていたら、そっと。

…唇が重なった。


｢…｣

その、触れるだけのキスは。
まるでAの優しくて…温かな心を映し出しているように思えて。

じわりと胸が熱くなると同時に、もっと。
もっと…

君が欲しくて堪らなくなったんだ。

｢…｣
｢…ぁ、む……っ、んっ、！｣


これ以上無いほど、顔を真っ赤にさせた彼女が僕から離れようとするのを。

すぐに引き止めて……強引に、唇を塞いだ。

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