え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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Aside

｢ア”ーーーーーーーッ!!!
彼氏起きろよ彼氏ィ!!!
後で秘蔵のいろぽてのアルバム見せてやるからさァ!!!｣

｢う”…起きろって思ってんなら叫ぶのやめろや…
耳いってえ…｣

悠がマイクが拾わないほどの小声で呟いた。まふくんはまだまだずっと叫んでいる。

その叫びが悠に更なるダメージを与えているとは夢にも思っていないらしい。


》まふくん必死じゃんww

》なんでそんなに見せたくないんですか？

》確かにまふくんの高音は凶器w


そんなコメントを横目に検索アプリを開く。

そして、“某船の赤色担当”と文字を打って検索をタップする。

文字は間違えていないはず、なのに。

『出てこない…』

検索結果に出てきたのは、赤い船の画像だけ。


》正式名称で打たなきゃ出てこないんじゃない？

》あ、そっか…

》某船の赤色担当じゃ出てこないと思いますよ


リスナーさんのコメントで理解する。

『ああ、本当は“某船の赤色担当”って名前じゃないの？』

今まで打っていた文字を削除してもう一度“某船”まで打ってみると、“もしかして？”という表示が出てきた。

『あ、これかも』

そう呟いた途端、ひょいっとスマホが宙を浮く。

『……げ』

｢…………………A？｣

ひくく掠れた声が上から聞こえて、反射的に上を向く。

目線の先には、怒った顔の悠。

あ、これは駄々っ子モードのスイッチ入ってんな、と理解するともうなにか言い返す気にはなれなかった。

悠はぽいっとスマホをカーペットの向こう側へと放り投げて、私の腰に腕を回してハグをする。

何も言わずに、グリグリと首に頭を押しつけながら。

｢そらちゃーん？
どうかした？｣

まふくんの心配そうな声が転がったイヤホンからかすかに聞こえる。

『あ、ああうん、大丈夫！』

悠を半ば引きずるようにしてイヤホンを拾い、耳にはめる。

『まふくん、検索でてこなかったよ…』

しかも駄々っ子モードの彼氏も付いてきたしね、と心の中で毒づく。

手に入れようとした情報が手に入らなかった挙げ句超重量級の重りがついてきたなんて散々だ。

それをどこかで察したのかまふくんはふっと短く鼻で笑ってからどこかムカッとくる口調で言った。

｢そらちゃん、僕の言うこと聞かないからそうなるんだよ？
検索かけるなら彼氏のいない所でそーっとバレないように＿＿＿＿｣

ﾌﾟｯ､という音がして、まふくんの声がとだえた。

悠が電話を切ったようにも見えたけど、そこは気にしないでおく。

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