え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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坂田side

｢…は？
いやいや、冗談きついて。

……なに、それ冗談じゃなくてほんまなん？
なんで、今になってそんな急に…｣

俺の問いかけに沈黙する2人にそう言えば、96猫の重々しい声が帰ってくる。

《…なりすましのせいや》

｢なりすましって……誰の？｣

そんな素っ頓狂な声を上げる。

《坂田のなりすましだった。

私達それがほんとに坂田だと思ってて。
それでAをからかったらあの子、“それ悠じゃない”って言うし…》

《それで“じゃあなりすましやん！”ってわしが言ったら、パニック起こして…

何とかなだめたんやけど…
多分、Aちゃんの中の恐怖心があの頃と結びついたんかもしれん》

《坂田、ほんとにごめん……

怒られても文句は言えないし、言い訳するつもりなんかないけど、ほんとにわざとじゃないの…》

2人がほぼ泣きかけの弱々しい声をあげるのを聞くと、どうにもいたたまれない。

斎藤と96猫が悪くないなんて元から知っているし、わざとじゃないなんてことももちろん理解している。

｢ええよ、それは分かってるから。
なりすましてるやつが悪いわけであって斎藤とか96猫が悪い訳ちゃうしな。

とりあえず、今はAの安全と体調が1番なんやから。
A今どんな感じ？｣

《やっぱショックやったみたいで、わしらのご飯作ってくれたねんけどAちゃん自身は気分悪くてご飯食べられへんくて。
すぐにお風呂はいって今寝室で寝かしてる。

もしもう仕事終わってんやったら早めに帰ってあげてや》

じわり、と目元が熱くなった。

どうしてかは分からない。

Aに申し訳なかったのか、自分が嫌になったのか。

どちらにせよ、酷く惨めな気持ちだった。

｢うん、分かった。

えっと……どうしよ、打ち合わせ｣

“どうしよう”というのも、この後も打ち合わせをするはずだったのだ。

Aをとるべきか、仕事を取るべきか。

俺の中で答えは決まっていたけれど、メンバーはどう思うか………

〈いいよ、打ち合わせは明日でもできるし。
今大事なのはAちゃんでしょ〉

〈は？逆に坂田お前Aちゃんより仕事優先する気なんですか？
はよAちゃんのとこ行ったれや〉

｢俺らはええから、な？｣

暖かい三人の言葉が胸にしみ入る。

本当にええメンバーやな。

｢じゃあ今から帰るわ。

…5人とも、ありがと｣

照れ隠しのようにお礼を言って、そのまま志麻くんの家を出た。

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