え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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no-side

｢ふふ、お邪魔してすいませんでした！
これからも“うちの”Aをよろしくお願いします〜！

飲み会楽しんできてください〜｣

また人懐っこい笑みで手を振ってオフィスから出ていこうとする間際、イケメンくんはこう言った。

｢あ、磯田クン、またなあ〜！



ちゃんと顔と名前覚えたし、盗る気になったらいつでもおいでや｣

また、あの目だ。

まん丸の目がすうっと細められて、口元が楽しそうに歪んだ。

捕食者のような、鋭い眼光が磯田を射抜く。

その迫力に、思わず社内の人間全員がゴクリと唾を飲んだ。

その時、なんとも間抜けなタイミングで電話がなる。

おい…誰だよこのタイミングで電話かかってきたやつ……マナーモードにしとけよ………!!!

イケメンくん怒るぞ……絶対怒るぞ……!!!!!!

社内に気まずい空気が蔓延する中、そのイケメンくんはポケットからスマホを取りだした。

着信音がなり続ける、Aとお揃いの赤いスマホケースが付けられたスマホを。

｢あ、ごめん俺やったわ｣

お前かよ………!!!!!!

社員の視線が集まる中イケメンくんは真顔で電話に出る。

｢んあ、A？

おん、忘れ物？
ああ、見つかった、見つかったよお。

ん、今から行くぅー。

うん、うん、んえ？
そらるさん怒ってんの？
え、なんで？
こわぁ、俺絶対怒られるパターンやん……｣

どうも通話相手はAらしく、甘く、優しい声になる。

いや、わかりやすっ。

その変貌ぶりに思わず真顔になる社員を横目に、イケメンくんは最後にぺこりと会釈をして通話しながらオフィスを出ていった。

マジでしたいことだけして帰ってたな、あの人。

少し唖然としながらも、社員たちは飲み会へと準備を進める。

他の社員たちがデスクの明かりを消していき、オフィスの鍵をかける準備をしている間も、磯田は少し血の気が引いた顔でぼーっとその場に突っ立っていた。

彼の頭の中では先程イケメンくんに囁かれた言葉がぐるぐると渦巻いている。



“キミの顔がどんだけ良くても、Aの彼氏は俺だけやから。
顔だけやったら、とかなんとか言ってたけど簡単に盗れると思ってんなよ。

そっちがその気なら、俺も本気でキミのこと潰させてもらうからな”



｢オレ、やべえ人に目つけられたかも……!!!｣

でしょうね!!

少し大きめの声量の呟きは、全員に聞こえないふりをされた。

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