え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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no-side

｢いえ、全然いいですよ!!!｣

妙に愛想が良く、これまた数オクターブ高い女性社員の言葉を聞いて周りの男性陣は心の中で呟いた、
“あ、コイツ狙ってんな”
と。

｢どなたを探してるか伺ってもよろしいでしょうか？｣

社員がそう聞くと、彼はにこにこ顔で言った。

ああ、にこにこ顔も尊い、と誰かが呟く。

｢一ノ瀬Aって名前なんですけど…｣

ぴきり、場の空気が凍る。

皆ぽかんと口を開け、磯田に至っては虚ろな顔でなにかブツブツと呟いている。

社員全員が嫌な予感を感じ取っていた。

｢ロビーで待ち合わせしてたのに、全然来おへんから…
もう、ほんまにA遅いわぁ｣

そして、その嫌な予感は彼のこの発言によりますます深まる。

一ノ瀬先輩を“A”と下の名前で呼び捨て→親しい間柄？

ロビーで待ち合わせ→一ノ瀬先輩が待ち合わせしていたのは彼氏さん

つまり、このイケメンは＿＿＿＿

一ノ瀬先輩の、彼氏さん?????

皆同じ結論にたどり着いたのか、顔面蒼白である。

｢あの、どうしたんですか？
顔、真っ青ですけど…｣

心配そうに覗き込む一ノ瀬先輩の彼氏さん(仮)の前に、磯田が進み出た。

｢正直に答えてください……


あなたは、一ノ瀬先輩とどんな関係なんですか?!?!｣

そのときの磯田以外の社員の気持ちは
“おいお前やめとけよ!!!!!!”
である。

しかし如何せんこの男はバカなのでそんなことは露知らず何故かやり遂げた満足気な表情でその青年を見ていた。

バカもここまで来ると笑えるだとか呆れるとかいう次元を越して、もはや頭の中が可哀想である。

しかし最も可哀想なのは磯田のプライベートにバリバリ踏み込んだまるでデリカシーのない質問を浴びせかけられたこのイケメンである。

お前のせいでイケメンくんが困ってるじゃねぇか!!! と言いたげな女性社員の目は鋭い。

磯田の目の前のイケメンは質問の意味を分かりかねているようで、明らかに困惑顔だ。

そして、少し照れたように頬を染めて可愛らしい笑顔を浮かべて言った。

｢Aの彼氏ですけど…

……あかんこれ恥ずいわぁ……｣

そう言って髪色と同じくらい顔を赤く染めて色白の手で顔をおおう。

女性社員はその可愛さに悶えた。

｢エ？？？？？？？
か、彼氏さん？？？？？

あの、ショッピングモールで迷子になったかと思えばキッズエリアで幼稚園児と遊んでた方？？｣

｢なんで知っとんの?!?!?!?!｣

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