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Aside
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「あの、こんなこと聞くのも失礼なんかもしれないんやけど。……君、もしかして俺のファンやったりする?」
気づけば時が過ぎ、彼との食事会の真っ最中。突然の彼のそんな言葉にびくりと肩が跳ね上がる。すると、彼が慌てて両手を前で振った。
「決して責めてるとかじゃなくて単純に気になっただけやから!」
な?と私を宥める彼の言葉に段々と視線が落ちていく。─────どうしよう。ここで、ファンだと言ってしまったらもう次はない?ここで、嘘をついてしまえば…………でも、
「スタッフです」
思わず口をついてでた言葉に驚いたような表情を見せる彼。それに追い打ちをかけるかのようにスタッフですとまた同じ言葉を繰り返した。───また、悪魔に魅せられてしまった。でも、お願い神様。きっとこれはいつか覚める夢だから今だけは夢を見させて。きっといつかこれは覚めるから。今だけ、今だけ。
「…………」
続く無言に考え込むような仕草をする彼。空気は最悪で逃げ出してしまいたかった。でも、そんなことする訳には行かなくてカチャカチャと音を立ててステーキを切って口に放り込む。味はしなかった。
「……うーん、いたかも?」
すると、やっと声を上げた彼は不思議そうに首を傾げながらそう呟いた。
「物販スタッフだったので記憶になくても当然ですよ」
そうヘラヘラ笑ってみせるけど落ち着きがなくて手元の水を飲み干してしまう。それに気付きすぐ様注いでくれる彼にお礼を言いつつ紳士だなぁと感心。その後も嘘に嘘を重ね水を飲むのが止まらない私に大丈夫?と半笑いで何度も水を注いでくれた。
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