光を求める少女の話 【文スト】【黒の時代】【太宰治】

第五十一話＿お風呂 ページ13

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お風呂の準備が終わり食べ終わっているであろうAの元へ行くと太宰は驚いた


太宰「君………」


A「…………」


先程と同じところで座っているAの御盆を見るとあの一口から食べていないことが直ぐ解った


太宰「A、何故食べていないんだい？」


A「………」


太宰「私が離れたからかい？」


A「………」


太宰「…………」


聞いても何も答えないため太宰は置いてあるスプーンを持ち粥を掬いAの口元に近づける


太宰「首領からちゃんと君に栄養を取らせるように云われているんだ。もう少しだけ食べておくれ」


A「…………」


そう云うとAはゆっくりと小さく口を開けた
太宰がスプーンを口の中にやり粥を食べさせる
ゆっくりとAのペースに合わせて食べさせるといつの間にか粥を完食していた
食欲がないという訳ではなかったみたいだ


太宰「次はお風呂だ。案内するから付いておいで」


太宰が浴室まで案内する。浴槽からは湯気が立っており暖かい空間になっていた
「ゆっくり浸かりなよ」と云い太宰は一回浴室を出る


A「……………」


太宰はAの寝間着とバスタオルを持って浴室に向かっている途中にバッシャーーン！！！という音が聞こえた


太宰「(真逆………！！？)」


嫌な予感がし急いで浴室に向かえば其の光景に驚愕する
Aは服を着たまま頭から浴槽に突っ込んでいた


太宰「何やっているんだ！！！」


急いで浴槽からAを起こす
当の本人はやはり理解はしておらず無言で太宰を見つめるだけだった


太宰「浴槽に浸かる時は服を脱ぐんだ、其れに頭から突っ込むんじゃなくて足から入るんだ」


A「…………」


此れでは頭も自分では出来ないだろうと察した太宰は裾を捲(まく)り
「髪洗ってあげるから此処に座って」とお風呂場にある椅子にAを座らせた


彼は丁寧にAの髪、身体を洗い、Aもまた大人しく洗われていた
此のまま浴槽に浸からせても今度は指示がない限り浸かっているだろうと
段々解ってきた太宰は「私が一分数えるから其の声が聴こえなくなったら出て来て」と云った


太宰「一、二、三…………」


A「………」


浴室には太宰の数える声が響き渡りAは静かに太宰を眺めている
其の光景は傍から見ると何ともシュールな光景だった

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