よし、番外編へ行こう。と思った今日この頃。【文スト】 参。

子供探し・アニヲタ様リクエスト ページ32

その日、探偵社に駆け込んできた女の人は、きっととても運が良かった。


僕はその時国木田さんにみっちり書類の整理の仕方を教わっており、同じ時に入社した凪は乱歩さんと駄菓子食べているのを太宰さんに見咎められて戦々恐々としている処だった。ホント莫迦なんだよな。……やはり、少しだけ胸がチクリとした。

そうしている処に、いきなりその女性は駆け込んできたのだ。僕らは唖然としてその女性の話を聞いていたけれど、どうやら女性の子供がいなくなってしまったらしい。要するに迷子だ。


間違っても武装探偵社に依頼するような内容ではないが、きっとそれだけ焦っていたということだろう。近くには交番もあるし、そっちに案内してあげようとしたら、凪がいきなり『ハイハイ私が案内しますよおねーさん！』と大声を上げた。よほど太宰さんとの問答に精神力が削がれていたらしい。



「お前だけで行ける訳」

『よーし敦君一緒に行こう！』

「えっちょっ」



とまあ、為されるがままに、僕は迷子探しに駆り出された訳だった。探偵社を出て行く時の国木田さんの顔が怖すぎたので、戻るのも嫌だ。どうしよう。

そのくせ張本人である彼女は能天気なまま『大丈夫かい敦君、豆が鳩鉄砲を喰らったような顔してるぜ！』と莫迦を露呈させていた。何だ鳩鉄砲って。あと別にそんな顔はしてない。


──女性の子供は、存外すぐに見つかった。見つけたのは凪だった。きっと精神年齢が近いせいだろう、連絡を受けた女性が来る頃には彼女は子供とカードゲームで圧勝しているくらいには仲良くなっていた。いつも持ち歩いてんのかよ、と戦慄した僕の気持ちを誰か代弁してくれ。



「ありがとう御座います、ありがとう御座います……！」

「おぼえてろよー姉ちゃん！」



ぶんぶん、と手を振る子供に、ぶんぶん、と同じように手を振り返す凪。ニコニコしたその顔を見て、胸の中心が痛んだ。

僕は彼女に、近づけるんだろうか。いつか、気持ちを伝えられる日が来るんだろうか。





──今ぐらいは、手を握ったって、許されるだろうか。





『およ、どうしたのよ敦君。デレてくれるなんて珍しい』

「別にデレた訳じゃない」

『辛辣ゥ！』

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