【太宰治】今はただ生きたい。【文スト】 (ページ11)

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太宰side

太宰｢執念を感じるね｣

医務室に行くなり与謝野先生に｢どう思う？｣と見せられたのは、Aの身体に無数にある刺し傷だった

1つや2つじゃない

腕にも腹にも太腿にも目につくところに無数にある

どうやら恨みのままに刺したようだ

傷痕はどれも右手と同じようにどす黒い

そしてやはり、そのどす黒い傷痕以外に痕は見当たらない

つまりその刺し傷もまた、死の要因に関係しているのだ

まさかここでかつて幾度と傷を見せびらかしてきたAの悪癖が役立つとは…

太宰｢…随分熱烈な求愛を受けたね｣

A｢これが求愛に見えるのか｣

軽蔑したような視線を向けてくるAに笑みだけ返す

どの傷痕も形もほぼ同じだ

刺す時、抜く時に多少力加減が変わるとすると、Aを滅多刺しにした武器は1つだ

そして、傷跡の大きさも差異はない

どうやら犯人は刃が突き刺さるところまで刺したようだ

無造作にこれだけの量を刺し続けるのは力の強い男くらいだ…

A｢犯人はどうでもいい。私の身体さえ見つかれば…｣

太宰｢君はそうで良くても、それじゃあ納得できない人間もいるのだよ｣

私の言葉にAはただ首を傾げた

分からないのならそれでもいいさ…

与謝野｢にしても、凄い数だねぇ｣

太宰｢えぇ、ほんとに。こんなことされる心当たりは？｣

A｢愚問だね、太宰｣

まぁそれもそうだ

ポートマフィアという組織に属していて、拷問を担当してるAが恨まれない言われはない

ただ、Aのことを知っていたのなら手を出すとは思えないのだ

Aを殺すと森さんはともかく、中也は激怒するだろう

そんなの地獄の門を叩くのに等しい

余程の命知らずか馬鹿の仕業だ

A｢太宰。私は君が身体を見つけてくれると信じているよ｣

｢そう遠くない間にね｣と私を見つめるA

彼女は私に、身体を見つける以外で何か期待をしている

直感でそう感じた