甘い香りに包まれて。【短編集】

まふまふ：緊張 ページ11

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　カバンの中には、友チョコと義理チョコと本命チョコ。

　ちゃんと忘れず、家を出る前に確認した。


　…でも、いざ渡すとなれば緊張しすぎて声もかけられない。


　「Aいつ渡すつもり？」

　「…どうしよ。」

　「ほんと、緊張しいだね。」


　間違いない。

　何かあればすぐに緊張してしまうし、声もかけられない。


　人気高いんだもん。私なんかが声かけていいのかなって思っちゃう。

　既に、色んな子たちからチョコもらってるし。


　「…もう、渡すのやめよっかな。」

　「は？」

　「…こわ。」


　背筋がひやっとした。ひえ、こわい。


　「誰があんたのお菓子作り手伝ったと思ってんの？」

　「その節はお世話になりました…。」


　お菓子作りがうまくないのに、見栄はってちょっとおしゃれなの作ろうとしたのは私です。

　家で失敗しまくって家族にこれ以上甘いものいらないって言われたし。


　「ほら、さっさと声かけてきな！」

　「ムリムリムリぃ…。」


　「…分かった、私が声かけてくるから。」

　「え！？」


　待ってって言ってるのに、待ってくれないし、なんなら声かけちゃったよ…。

　ちらり、まふまふくんと目があった。

＊まふまふ：緊張→←＊そらる：失敗

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