死ぬまで生きる ページ46
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はい。
結論から云うと、奴が起きてしまいました。
織田作さんと別れ、少し離れたところまで走ってから芥川さんの応急処置と、医療班への連絡だけした。
そしてヨコハマの街で一際目立っているマフィアのビル目がけて、極力揺らさないように走っていた。
途中、ファミレスに入ろうとする親子や学校帰りらしい制服の集団に不審げに見られたが、気にせず真っ直ぐ目指す。
そんな努力も甲斐なく、信号待ちの途中芥川さんの呼吸が少し乱れたと思ったら、起きていた。
しかし意外なことに、全く暴れないし攻撃してくることもない。
此処が街中であることに配慮したのかもしれない。
目を伏せてじっとしていた。
それ自体はいいことだけど、熱があるんじゃないかとか、疑う。
逆に怖い。
その信号待ちで、血が服に滲んでいる私たちを見兼ねたのか、声をかけてくる勇気のある人がいた。
「あの……救急車とか、呼びましょうか?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
その人はそうですか、とだけ云ってそそくさと信号を渡って行ってしまった。
息を切らしていたし、ビルまであともう少しだったので、私は走らずに歩くことにした。
すると、芥川さんが小さく呟いた。
「……あの時、お前はまだ生きるつもりでいたのか」
予想外のことに驚いて立ち止まってしまう。
サラリーマンが追い越しながら見てきたので、芥川さんを背負いなおして再び歩き出した。
「生憎、太宰幹部には憧れてなくて」
そんな軽口に怒ることも笑うこともせず、芥川さんは亦口を開く。
「救援を求めたところで、あの男が来なければお前は死んでいた」
あれ、無視?と思いながら答える。
「織田作さんが来なくても、何とかするつもりでした。どうにかして生き延びてやるぞって、後からなら何とでも云えますけどね」
芥川さんはその後ずっと無言だった。
ビルに到着し、二人仲良く手術と入院が決定する。
織田作さんに大きな借りを作ってしまったなと考えながら、ベッドの上ですとん、と眠りに落ちた。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年10月1日 22時