呪いの子 ページ37
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あれから二日。
石川さん、川端さんと私の三人で、レフ・トルストイの経歴を浚っていた。
いつもの二倍近くの報告を中原さん改め中也さん(第55話参照)に済ませた後、躊躇いがちにレフ・トルストイのことを切り出したところ、首領案件になった(ここで死亡)
そして生まれたての小鹿のように震える私に、首領はこう云った。
「君が下した決断には、君が責任をもって処理しなさい。其れが組織にとって、最適解だったと云えるようにね」
実は今でも首領の前に出た時の震えが止まってない。
最長記録かもしれない。
一日も経ってるのにね。
というわけで、冒頭に戻る。
私のメモをざっと見た石川さんが、呟いた。
「まさかね、伯爵家の出だったとは」
そう、彼は露西亜の伯爵家の四男だった。
だが、母親、父親、祖母、叔母と、引き取り先の親戚を相次いで亡くし、その次の引き取り先で呪いだと騒がれて売られた、と。
人生判らなすぎる。
彼のあの目の理由も何となく察した。
すると、別の場所で尋問をしていたレマルクさんが帰ってきた。
「如何だった?」
石川さんが問うのに、レマルクさんは肩を竦めて答える。
「やっぱり、判らない三昧だヨ。異能力も聞けなかった。絶対異能持ちだと思ったんだケド」
何も聞かされずただ言われたことをやっていたらしい。
特に酷い扱いはされなかったと云ってはいる。
ひとつ溜息をついた。
過去が判ったところで組織へのメリットを提示しなきゃ誰も納得しないに決まっている。
何とかして彼の雇用意義を見出せないだろうか。
椅子から立ち上がり、レフ・トルストイがいるはずの別室に入る。
すると、彼はコップに入った水を飲んでいた。
レマルクさんが出してあげたのだろうと特に気に留めなかったのだが、そのレマルクさんが後ろで声を上げた。
「その水、何処から出したノ!?」
「……え、レマルクさんが出したんじゃないんですか?」
思わず顔を見合わせた。
この部屋は脱走の可能性も考慮して外からしか開けられない鍵がついている。
だから、彼自身が水を取りに行ったことはあり得ないし、外に出たとして黒服に見つかって射殺で終わりだ。
黒服にも鍵の番号は教えてないから、必然この間で彼に水を出せるのはレマルクさんしかいない。
で、レマルクさんが水を出していないとなると。
「……異能力かなあ」
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年10月1日 22時