異能訓練 ページ19
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燦々と照りつける太陽。
目の前には廃倉庫。
手には黒外套。
倉庫の中から聞こえる鈍い音と呻き。
数十分前、中原さんに呼び出され、謎の黒外套と地図を渡されて目的地に向かった結果がこれだ。
いや何事。
流石にあの中に入っていく勇気はないかなー、なんて考えていると、突然銃声が聞こえた。
そして聞き覚えのある声が。
「安部君、いるんだろう。さっさと入り給え」
それだけで猫背気味の背筋がピーンと伸び、指先が冷えた。
まさしくマフィア幹部の声。
扉までの距離が永遠に感じられる。
漸く辿り着いても手に力が入らず、扉が開かない。
すると、向こう側からガラ、と開いた。
先ほどの声と同じ、冷たい雰囲気を纏った太宰幹部だ。
「遅い」
ただ一言言うと、踵を返して入っていってしまった。
そんなこと言ったって、太宰幹部は怖いし、足は震えてるし、暗いし怖いし。
足音を立てないように歩く。
何故かは自分でもわからない。
「まずは腕試しだ」
そう太宰幹部が言うと、また銃声が聞こえた。
まだ目が慣れていないのでよくわからないが、如何やら私の方に向かってきているみたいだった。
恐怖する間もなく、息を呑む。
しかし、銃弾が届くことはなかった。
私が状況を理解する前に、太宰幹部が面白がっているような声を出した。
「へえ。思ったより期待はしてもいいみたいだ」
とりあえず自分の生存確認はできたので、詰めていた息を少し吐くと、カラン、と金属が落ちたような音がした。
最初より目が慣れてきて、少し目を凝らすと、太宰幹部以外にもう一人、黒外套を着た青白い顔の少年がいた。
肺でも病んでいるのか、ケホケホ、と不健康そうな咳をこぼしている。
太宰幹部はそれを一瞥して、口を開いた。
「この子は芥川君だ。私の部下だよ。これからは芥川君と訓練をすることになると思ってくれていい」
そして、芥川さんに顔だけ向け、勝手に私の紹介をはじめる。
「で、芥川君。この子の名前はごんだよ。名無しのごん子ちゃん」
こんな適当な他人紹介が今までにあっただろうか。
しかし相手が相手、突っ込むこともできない。
いろいろ複雑な気持ちになる私と、きょとんとしている芥川さんを無視して、太宰幹部はなぜか嬉しそうに言った。
「却説、手始めに何方が強いのか対決してみよう。準備はいいね、はい、始め」
「羅生門!」
その瞬間、前方から黒い物体が飛んできた。
こんなすぐ攻撃してくるか普通。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年10月1日 22時