CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ48)

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夜間にここを訪れたことは無かった。
静けさに包まれた空間で、私たちの足音だけが響く。常夜灯がついては消え、カチ、カチという無機質な音だけがやけに耳につく。

ガラス張りの研究室の中には、寝静まった動物たちの姿がうっすらと見える。通路を進むとやがて見知った研究室が並ぶ通りに出て──

「僕はあそこの研究室でデータを抜いて持って行かなきゃいけないんですけど、貴方は？」
「…あ、えっと。私はここでは特にすることは…無いです、ね」

突然話しかけられて、一瞬言葉に詰まる。研究棟であれば数件用事があったのだが、予想外にもこちらに来ることになってしまったから。

彼は私の言葉を聞くと、そのまま目当ての研究室まで歩いて行った。あれは書庫、兼データ室とされる場所だろう。入ったことは無いが、表にその表示があったような。

ここで待つのもなんだから、彼に続いてその部屋へと入る。中には壁一面の本棚と──机の上には散らばった資料、複数のモニター。

不用心にもそのモニターはつきっぱなしで、先に部屋に入った彼はパソコンの前の椅子に腰かけるとさっそく作業を始めたようだった。

…机の上には資料や開きっぱなしの本が複数、置いてあって。"先日の件に関する報告書"や"突如発生した竜の行き先に関する予想図"、"突然変異による獣人の多様化"等々様々な資料が置かれている。

簡単にカテゴライズされているのか、付箋で『実験結果』や『使用薬品』──実験結果？使用薬品？

嫌な予感がして、悪いことだと分かりつつもその資料に手を伸ばす。ここは動物保護棟だ。珍しい動物を保護や育てたりすることはあれど、実験動物のような扱いはしない、筈。

『使用薬品』と書かれた付箋が貼ってあるその資料に手を伸ばし、パラパラと捲ると。

──毒性の強い、試験薬の数々。

一瞬、頭の中が真っ白になった。未だに副作用が強く使用を禁止されている薬の名前もある。私だからこそ飲めたような薬も、それこそ大量に。

…これ、研究棟で扱うような種類の薬や毒だ。
しかもこの合わせ方、使い方はわざわざ動物でしなくてもいいような──それこそ、意図的に何かを苦しめるように使うような、"それ"で。

動揺、瞬く間に自分が所属していた"研究棟"への不信感が募る。

加え、この動物保護棟への不信感も。どういうことだ、これじゃあまるで、研究棟と動物保護棟が手を組んで何か、大きな間違いを──