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「そっち…には、行かれへんのか。A以外におる奴は──」
「まふ！」
センラくんの声を遮るようにして呼ばれた誰かの名前。声は先程の藍色の髪の男性、ということは。私の後ろ、誰からこちらへ歩いてくるような足音。
そう、白い獣人の男の子だった。
「はい！」
「最終の目的地は変わらないから、そこから行ける──動物保護棟の数件だけ頼む。後は俺がやるから。
……その人のこと──頼んだぞ」
「え？」という言葉が重なる。私と『まふ』と呼ばれたその男の子の声。何故、彼が私のことを頼むと言うのだろう。
「そらるさん、僕だけで──」
「その人がいるから大丈夫、お前だけでも平気。一種の試験だと思っていつも通りに行って」
少し焦り気味の、男の子の声にそう返した男性。『まふ』と呼ばれた男の子は私のことを一度見て、黒い壁の向こうにいる『そらるさん』と呼んだ男性に返事をした。
私は壁伝いに立ち上がり、未だに震えている足を両手で叩いて。歩け、まだ生きているんだから。
「…A、その子について行って。最終的な合流地点はこの人に任せるから。おいセンラ、放心してないで行くぞ、追い付かれる」
うらたさんの言葉に返事をして、放心しているらしいセンラくんに「私は大丈夫だから」と声をかけた。「無理はせんとってな」と言った彼の声色から、今までにないほど真剣であることを感じ取る。
研究棟への道は分断され、目の前にあるのは動物保護棟への道。あの日行くことが叶わなかったここに、戻って来た今行くことになるとは。
今のところこちらに続く道に警備員が来る様子は無い。研究棟への侵入者だと判断されたからだろうか、動物保護棟への追手は無いように思える。
私より少し先にいる、男の子に視線を向けると。
「──行きましょうか」
私へと視線を向けることは無く、彼は動物保護棟の入り口へと歩き出した。
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結月。(プロフ) - この作品と出会ってから一気読みするほどめちゃくちゃ大好きです。作者様のペースで構いませんので、更新楽しみに待っております。 (2022年2月10日 2時) (
レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：#N/A | 作成日時：2021年11月24日 21時
