14-3 ページ45
「──誰だ、そこにいるのは。ここの連中じゃねえだろ」
驚きに思わず声を上げそうになって口を塞ぐ。うらたさんが壁に身体を預けて話しているところからするに、ロビーの真ん中ではなくどこかの通路にその人物は佇んでいるようで。
ロビーには複数の道が繋がっている。入口も複数ある為、別の入り口から入って来た私達とはまた別の、ここに勤めている者じゃない、誰か。
「…何でここの人間じゃないと判断した？」
返ってきたのは、低い男性の声。妙に人に聞かせるような落ち着いた声、淡々とした話し方。質問に質問で返されたうらたさんは少し嫌そうな顔をしたが、話が進まないと判断したのかその理由を口にした。
「ここの警備員は全員同じ靴を履いてる。歩き方によって足音は異なるが、今聞こえた足音は材質的にアンタたちは警備員じゃないと分かるもんだった。それに──」
極限まで足音を殺した走り方、それはそこら辺にいる奴に簡単にできるもんじゃない。国の研究機関にそんな奴がいてたまるか──そう、うらたさんが口にすると。
「正解。俺達はここで働いてる訳じゃない。正真正銘の侵入者。そっちは四人、いや五人かな、一人誰かを抱えてるような慎重な走り方。走り方からして結構な手練れもいるんじゃない？」
「……はあ。そっちは二人、前に今喋ってるアンタがいて後ろに不慣れな奴を連れてるだろ、そいつの方が足音がデカい。で、何」
あちらの男性が話していた最中、何故か私を抱えるセンラくんの腕の力が強くなったような気がして。疑問に思って顔をセンラくんの方へ向けると、私を持ち上げた時の笑顔は消えて今は少しだけ険しい表情をしている、ような。
「出会い頭に打たないことは約束する。正体を隠したままなのは困るでしょ、お互い」
その言葉を聞き、うらたさんは私たちの方へ顔を向けた。センラくんは私を地面に下ろして頷き、他の二人も同様に頷いて。無言のまま広いロビーの空間の方へ歩き出した。
すると、今まで消していた足音が突然聞こえるようになったかのように──至近距離の足音、それが私達五人から六人、七人に増えて。
「アンタ達────何者だ？」
そこに立っていた二人組は、深い青──藍色の髪の男性と、白い髪──加え、人間ではないことを証明する大きな猫の耳に尻尾を持つ、獣人と思われる少年だった。
「君らと同じ、不法侵入者だよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 201人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結月。(プロフ) - この作品と出会ってから一気読みするほどめちゃくちゃ大好きです。作者様のペースで構いませんので、更新楽しみに待っております。 (2022年2月10日 2時) (
レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：#N/A | 作成日時：2021年11月24日 21時
