14-2 ページ44
懐中電灯の灯りが別方向へ向き、足音が遠くなった頃合い。身を隠していた物陰から出てまた歩き出したその時。
「失礼、あなた方は」
「あ〜！すんません！僕らちょっと戻る時間おそなってもうて──」
振り返るとその直後、鈍い音が付近に響く。まずはじめに知らない人物の声、警備員と思われる男性がこちらに声をかけてきて、それをセンラくんが何事もなく収めようとしたはずだが──
何故、人が倒れるような音が聞こえた？
「や、やってもうた」
「……坂田」
既に坂田くんがその警備員を気絶させてしまったらしい。丸く収めようとしたセンラくんは呆れたような声を出して、溜息を吐いてしゃがみこんだ。
あまりにも一瞬の出来事だった、その反応速度に驚愕し、加えこれはまずいのではないかと──
「……ごめん、肩に手置かれたから防衛本能働いて気絶させてもうた…」
「やってもうた事はしゃーないわ、拘束して影に転がしとくぞ」
志麻さんはセンラくんの横にしゃがみこんで、気絶している警備員の男性の持ち物等を探り始めた。そして手際よく持っていた紐で男性を拘束し──慣れた手つきだな。
彼は先程身を隠していた物陰にその警備員を放ると、『心配するな』とでも言うように、青い顔をしていた坂田さんの背中を強めに叩いた。
「無線、一応切っといたけど反応が無い時点で他の警備員が確認しに来ると思うわ」
「オッケー、じゃあ」
ひょい、と持ち上げられて地面から足が浮く感覚。うわっ、と私を持ち上げた誰かに咄嗟にしがみつけば間近にあったセンラくんの顔。
ニッコリと笑う彼。後ろから聞こえた坂田くんの「あ、センラずる！」という声を無視して、彼は私を抱えて走り出した。…初めて会った時のことを思い出すな、この抱えられ方は。
恐怖も戸惑いもなく彼に掴まることができるようになった自分のことを思うと、この短期間ですっかり絆され信頼してしまうようになったな、と──
「とりあえず毒薬の回収、その後に上階──」
先頭を走るうらたさんが話していた、その時。途中で言葉を途切れさせ、「止まれ」と手で制止させた。目前には少し広い空間、複数の分かれ道。
大量にある研究室のブロックごとに分かれた分岐点、丁度ロビーにあたる場所だ。どこに進むのか見当を付けようとしたのか、と思ったけれど。
私のその予想とは違い、そこには"別の何か"が居た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 201人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結月。(プロフ) - この作品と出会ってから一気読みするほどめちゃくちゃ大好きです。作者様のペースで構いませんので、更新楽しみに待っております。 (2022年2月10日 2時) (
レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：#N/A | 作成日時：2021年11月24日 21時
