CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ41)

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1、私にあの様な知り合いはいたのか。

2、私の人生は殆ど孤児院と研究棟のみで構成されている。見た事があるのであればそのどちらかだ。あの様な身なりだとテレビに映る芸能人でもあるまいし──何より、志麻さんも特に何も言ってこなかったのが何よりの証拠だ。

3、あの男性の特徴からして、研究棟に勤務する人物である可能性が高い。よくいる猫背の、分厚い眼鏡。白衣の下はスーツを見に纏っているし。

4、そう、スーツだ。加えその他の時計や鞄もそれなりの物を持っていたような。つまり、あの人物は恐らく高給取り。じゃあ、組織内でも立場が上の人物だと考えて。上長達の顔を思い出せ、どこかで見た事がある筈だ。そう、どこかで見た事がある程度なら、例えば挨拶のみした事があるような上の──

突然、ドアを開ける音。心臓が跳ね上がって思わず身構え、顔を向けると。

「し、志麻さん」
「悪い、アイツ車乗ってもうて。これ以上俺だけで追うんは危険やと──」

運転席に乗り込む彼を見ながら、ハッとする。そうだ、思い出した。挨拶しかした事ないような人、自分の直属の上司よりもっと上の、それこそトップに立つような。

「志麻さん、すぐに車出して貰えますか」
「え？あぁ、ええけど。どこ？」

「国立技術開発局の──研究棟です。最短ルート、案内します」

そう、あの顔は。
式典で何度か目にした事がある。研究棟──研究所長の右腕と称される重要管理職の男性。これは自分が思っていたよりも大変な事態になってきたな、と思いつつ車を発進させた志麻さんに道順を伝えた。

そして、あの男性の正体を告げると彼は苦虫を噛み潰したような顔をして。

「何やそれ、マジで面倒なやつになってきたな」
「あはは、私の記憶違いだといいんですけどね…。とりあえず、それを確かめる為に研究棟に入るかどうか確認しに行きましょうか」

薄暗い、ひとけのない場所に車を停めて車から出る。研究棟に勤務する役職が高い人間は基本個部屋を与えられ、そこに寝泊まりする人間も多い。

以前、研究所長も研究棟から殆ど出ないと聞いたことがある。その間近にいるあの男性も、もしかしたらそうなのかもとここまで車を走らせて貰った次第だ。

研究棟の敷地とされる境界線、入口付近の身を隠せる場所に二人で潜む。一応最短ルートでここまで来たが、既に入っている可能性も否めない。とりあえず数十分程度──

「──あ」

ビンゴ。大当たりだ。