CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ40)

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「──、志麻さん」
「何や、どうした」

その、記憶の片隅に記録があった人物から少し距離を置いて動向を探る。あの顔はどこかで見たことがある。研究室か、研究棟か。それとももっと大きな括りか。

「……左斜め後ろ、8時の方向です。痩せ型の男性、恐らくヒト。スーツ姿で──あまり背は高くありません、猫背気味です。怪しまれない程度に見ててもらえますか」

小声で彼にそう伝えると、視線だけが動いた。歩くスピードを緩め、見える位置に着くまで速度を落として。

目線を落として動向を見ていると。小さな袋を持っているその人物は、一件彼らがバラ撒いた菓子を回収しているように見えて、『似たような菓子を道に落としていた』。

「──とりあえずアレ、回収しましょうか」
「アイツは？」
「まだ捕まえなくていいです。顔、しっかり覚えて」

例の人物が落とした菓子が他の人間に拾われる前に、視線が別方向に向いた隙を見て回収する。幸いにも数は少ないらしく、このままだと全て回収することに困ることは無さそうだが──

問題はあの人物を捕まえてもこの件が解決するかどうか。"身に付けている衣服"やその"風貌"から明らかに反社会的、下請け──運ぶだけの役割を与えられた者であると判断できる場合は、私達の少し前を歩く人物を捕まえても仕方が無い。

ただ、今追っている人物は『痩せ型の男性』、『猫背』、『それなりのスーツを見に纏っている』。運び屋が存在している訳では無く、この人物が真犯人であるという可能性も否めない。

『もっと上に何かが"居る"と見て、様子を見て一度引くか』それとも『真犯人と見てすぐにでも捕らえるか』。──まあ、安牌はどう考えても前者にあたるのだが。

…そうこうしているうちに、例の人物はこの集団から離れて別方向へと歩き始めた。まずい、早く頭の中にある違和感をハッキリさせないと。あの顔はどこかで見たことがある筈じゃ──

「…志麻さん、私あの人どこかで見たことがある気がするんです」
「じゃ、後は俺の仕事やな」

「え？」と見上げた彼は、好戦的な笑みを浮かべていた。『後は俺の仕事』というのはどういう意味なのだろう。

疑問に思っていると、車のキーを投げ渡されて。慌ててキャッチすると、彼は私より少し先で「顔見知りの可能性があるんやったら──」と視線を前から動かさずに答えて。

「先に車戻っとき、俺だけで尾行する」