CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ39)

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13.gift ページ39

「──そろそろ、時間やな」

私が"今日の護衛のお礼に"と志麻さんにあげた、昼間うらたさんに買ってもらったスイーツを頬張りながら彼は呟いた。運転席でハンドルに身を預けながら外の様子を窺う様は中々に仕事がデキる男、といった風貌で。

……スコーンのチョコチップの跡が口の周りに付いていなければ、もっと様になっているのだけれど。

もし誰かを追うことになった際、もしくは逃走しなければならなくなった際のために私達二人は車で移動していた。灯りの少ない場所に車を置き、いざとなればここに戻ってくる。

腕時計を確認してドアを開けようとした彼に、ちょいちょい、とシャツの袖を引っ張ってジェスチャーで口元を指す。鏡を見た彼は「うわ」と呟くとアームレストの収納を開けて、すぐさまティッシュを取り出して口元を拭いていた。

後ろから見ても少し耳が赤かったのは、見なかったことにしておこう。多分、チョコレートの跡を付けながら少しカッコつけていたことを恥ずかしく思っているみたいだから。

夜の街に飛び出せば、すぐさま人混みに紛れ混んだ。この国の夜はいくら治安が悪く危険だといえども、それは"治安を悪くしている原因がある"からで。

あまり柄の良くないヒト、様々な種族が街を練り歩いていた。それぞれ己の個性を表現するかのような奇抜な格好で街を歩き、罵声や悲鳴が時々耳をつんざく。

「……来たな」

志麻さんがそう呟けば、丁度前方、私達から少し離れた位置に遥か上空からスポットライトが当てられた。空を見上げれば、あの時見た、あのヘリがそこに。

するとたちまち己があるがままに振舞っていた街の人間が、声を揃えて「USSS！」と叫び始めた。

…まるでそう、何かの宗教の信者みたいに。

「今からこの場にいる人間、大体の人相と身体的特徴を記憶して下さい。全員じゃなくて構いません。何か怪しいと思う者を中心に──貴方の直感を信じています」
「了解」

お互い視線は交わさずに、言葉だけでその場から歩き出した。狂乱する人間達を尻目に菓子がバラ撒かれている中心へと足を進める。

それを拾う者、拾って──口にする者。それ以外の、何か別のものをバラ撒いている何者かを見つけ出せ。拾うフリをして毒を撒いている何者かを見つけ出せ。今ここで見つけ出さなくてもいい、何か手がかりを──

──ふと、見た事のある顔が視界の隅にチラついた気がした。