CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ2)

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「…あれ、コーヒー無くなっちゃった」

しばらくしてから。集中していたら、どうやら時はすぐに過ぎてしまっていたようで。周りを見渡すと一人、実験室の中。…センラさんは？

彼の名前を呼ぼうとして、そういえばと記憶の糸を辿る。
少し前に洗い物をしてくると言って実験室を出て行ったような。集中していた私はおそらく生返事でそれに対して返したし、確信も持てないから彼の話をあまり聞いていなかったんだろう。

座っていた椅子から立ち上がって、中身のなくなったマグカップを持つ。

多分、洗い物と言うと夕食のお皿を洗いに行ったのだろうし。この空のマグカップの中身を満たさなければならないからと、キッチンへ向かうことにした。

……どうやら、寝ているらしい。

明かりのついていたキッチンの中へ入ると、いつも座っているテーブルにうつ伏せになって彼は眠ってしまっていた。

疲れていたのだろうか、すやすやと寝息を立てながら寝ている。起こさないようにと静かに音を殺すようにして歩き、マグカップを机の上に置いた。

コーヒーメーカーに目を向けると…なんと、温かいコーヒーが既に用意されているではないか。近くにコーヒー豆を保存している瓶があるから、恐らく彼が気を利かせて淹れておいてくれたのだろう。
その途中で寝てしまった、のだろうか。

ありがたく温かいコーヒーを空になったマグカップに注いで、彼が座っている場所の隣の椅子を引いて座る。

…普段は気の抜けているところを見ることがないから、なんだか新鮮だ。あまり世話を焼いてくれなくていいとは言ったものの、結局、毎日私より早くに起きて私を起こしに来ては朝ご飯を用意してくれているのだから。

普段の笑みを湛えた表情からは想像もつかない、そのあどけない表情を微笑ましく見つめる。私の前でいつも畏まらなくてもいいのに──とは、よく思うのだけれど。

視線をコーヒーに戻して、少しだけ口に含むとほのかな苦みが広がった。真夜中に飲むコーヒーは背徳の味がする。カフェインによる副作用が──私は副作用は出ないが──ある為、真夜中に飲む飲み物ではないから。

「……ぅ、う」

小さな声が隣から聞こえて。マグカップを机に置き、その声の方を見ると。その声の主は勿論、隣に座って寝ていたセンラさんで。

「…や、っく……ぅ」

うなされているような声。どうしよう、起こした方がいいだろうか。心配になって彼の顔を覗き込むと。

──涙が一滴、頬を伝っていた。