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子山羊の郵便２ ページ50

「ご無沙汰しております、森医師(せんせい)」
目を細め、口許には微笑を浮かべて、私は恭しく頭を下げた。
「町の闇医者先生から今や横浜の夜を総べる巨大異能組織ポートマフィアの首領とは……いやはや私の情報をそんなに役立てて頂けたなんて、情報屋『子山羊』として鼻が高い」
私がわざとらしくそう云うと、森さんは僅かに眉を寄せて、それから「君が……そうだったのか」と呟いた。

「ええ、そうです。森医師は上得意様なものですから、何れは直接本来の姿を見お見せしたいと思っておりました」
「成程。それは光栄なことだ。……ところで、Aちゃん、だったかな？」
「はい」
「前のように話してくれてもいいんだよ。そう畏まらなくて構わない」
手を組みながらそう云う森さんの瞳は、どこか懐かしむような色をしていた。

「いえ、そういう訳にもいきません。私はマフィア首領とそう親しくなれる立場では有りませんから。それに、今は《羊》(敵対組織)の身ですし」
そう答えると森さんは幾許か寂しげに微笑んだ。
「そうかい……。でも、君とはそれなりに長い付き合いだ。個人的に仲良くなりたいなと思っているよ」
私はその申し出に微笑を返した。

「黙れ幼女趣味(ロリコン)中年(お気持ちだけ受け取っておきます)」

あっ、やっべ☆
つい本音が出てしまった。

「……失敬、本音と建前が逆になってしまいました。森医師、申し訳ありません」
私は心底すまなそうな顔をして謝罪した。
「……あぁ、うん。大丈夫だよ」
森さんは少し固まった後、引き攣り笑いで応えた。
「私、まだ中年では……」
「いや幼女趣味は否定しねえのかよ。それでいいのかポートマフィア首領」
「幼女趣味とは子山羊君にずっと呼ばれていたからねえ……」
中也が呆れたように「ええ……」と呟いたところで、首領執務室の扉が開かれた。


入ってきた人物は、


「どーも、お邪魔します……おや」


私が知っている人物とは、


「やあ太宰君、待っていたよ」

「あ！ お前あん時の枯れ木小僧！ 手前、あん時はよくも！」


逆の目を隠す様に(・・・・・・・・)、包帯を巻いていた(・・・・・・・・)。







BEAST? 流石に知らなかったよ、此の野郎!!!

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