君の救いは ページ39
花瓶の水を替える。
窓を数
「A」
返事は来ずとも、話しかける。
白い壁と暮れの色の窓を背に寝台脇の椅子に座る。
沢山話して、話して。
思えばずっと私達は会話をしてこなかったのだなとまた痛感する。
君と他愛のない話をした日数は数えられる程だ。
それが少し寂しい。
君の目が覚めたら何をしよう。
そうそう、中也から聞いたよ。君はカラオケに行くのが好きなんだって？
君の歌声、聴いてみたいな。
君の声は鈴を転がしたかのような可憐な声だから、きっと全世界の人間の心を掴んでしまうような歌声を聴かせてくれるんだろうな。想像するだけで楽しみだ。
四年前、君を怒らせたあの日、私が勝手に開けて漁ってしまったテレビ台の下。あの中に所狭しと並んでいたアニメのDVD。この間、その中にあった作品の一つをレンタル屋で借りて観てみたんだ。アニメだけと云わず、原作の漫画も、小説も読んだんだ。
本当に面白かったよ。君が嵌っていた理由もよく判った。
あの作品の中でもあったけど、人を『見る』ことって、本当に大切なんだね。
『目の前の人をちゃんと見て、対等な人間として尊敬する』こと。
私は大切なことを何一つ理解していなかった。
君はずっと、私を追いかけてくれていたと云うのに。
起きたら沢山話そう。
約束したからね、「ちゃんと言葉にする」って。「良い事も、厭な事も、不安な事も、なるべく口に出す」って。これくらいじゃ失った時間は到底取り戻せないけど、もう話せなくなって後悔するよりかはずっといい。
A。君の目が覚めた時、もう君が寂しい思いをしなくてもいいように、今からずっと此処に居ようかな。
……なーんて。そんな事したら君は怒るよね。ちゃんと仕事してくださいって、真面目な君のことだから私の事を叱るんだろうな。腕の関節を外されるの、結構痛いのだよ？
安心してよ。君が気を遣わなくてもいいように、ちゃんと仕事を片付けてから来てるから。
だからさ――。
私はAの輪郭をなぞるように、手の甲でそっと撫ぜた。
長い髪の毛をそっと払ってやる。
白く柔らかい頬に、そっと唇を降らせた。
蒲団の上の白い手を取る。掌に指を滑らせれば、治りかけの
「――だからさ、A。早く目を覚ましてよ」
力の入らない手を握る。
そこからは人の温もりが伝わるだけで、握り返されることはなかった。
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます！ 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー（どの口が） (6月21日 3時) (
レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ！？！？ついでに私も泣くよ！？(？)BEASTめっちゃ好きだけど！！作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます！ これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公！！いやbeastもいいけど嬉しいですけど！！！ 続き楽しみに待ってます頑張ってください！ (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます！！ イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します！！ (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢野秋 | 作成日時：2021年11月1日 2時
