肆 ページ6
霊華が店を出て完全に姿が見えなくなったのを確認して私はため息を吐いた。
「あの人には嘘が通じなくて困りますねぇ。」
机に肘をついて両手を組んだ。今、なんとも間の抜けた顔をしているな…なんて自分のことを考える。くだらない。
陶磁器の中に残ったロシアンコーヒーを飲み干して、弱い風が止むのを待った。
「お代わりはいりますか？」
女性店員が聞いてきた。
「結構です。ありがとう。お会計お願いできますか。」
「はい。」
女性店員は機械的に返事をし、義務的に私とのやりとりを済ませた。
(…ああ、この人、もうすぐで休憩時間なんだなあ。)
彼女の思考は如何にも人間らしいものだった。
「また来ます。」
試しにそう言ってみた。
「ありがとうございます。」『態々言わなくていいのに。』
残念な人だと思った。何も知らないふりをして店を出た。
店を出て、何をしようかなって考えた。店にいた時は決まっていた事を今はふっと忘れてしまった。ぼーっと歩いていたら、したかったことを思い出したので、尾行してやろうと思った。
でもその時既に霊華の姿は無かったので、霊華と太宰さんがしそうな事を考えた。
洋生菓子を食べようが食べまいが、きっと霊華は店をたったと出ただろう。早めに出るんだから、きっと太宰さんと何かがあるのではないか。って思って、直ぐに川だと思った。
鶴見川に、面白いものがある。上がる気分を悟られないように私は鶴見川へ向かった。
*******
案の定いた。流れている。私は橋の上から眺めていた。
襤褸を着た少年が震えている。
「ーーーーーーー」『これはノーカンで…！！！』
何がだ。
少年はふるふると震えて、結果飛び込んだ。助けるつもりらしかった。
数分後助けられた太宰さんと霊華。霊華は元から血色が悪い…否、色白の為かなり心配されたが彼女が一番ピンピンしている。
太宰さんはカッと目を見開いたかと思えば僵屍の如く起き上がった。怖い。
ここからは会話内容は聞こえない。聞こえるのは、襤褸を着た少年の心の声だけ。
何だかなあ、聞こえないなあ、つまらないなあ。
霊華がじぃっとこちらを見ている。笑顔を返せば心底面倒くさそうな雰囲気を醸し出し始めた。顔に出せ。顔に。
「っどーん！！！です！」
私は橋の上から飛び降りた。着地時はちょっと足が痛い。
少年は驚いていた。
「はじめまして、ですね。少年。」
黄昏色の雫が一粒落ちて、黄金の川に波紋を作る
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華の幽霊《sgsyu》(プロフ) - 淋さん» コメントありがとうございます。普ちゃんの文才は本当に素晴らしくて、私も参考にさせて貰っているところがいくつもあります。応援ありがとうございます。普ちゃんと共に頑張っていこうかと思います。 (2018年4月1日 20時) (
レス) id: db4eb032b8 (このIDを非表示/違反報告)
淋 - どうでもよいお話ですが或るボカロ曲を連想しました…それだけです(*´ `) (2018年4月1日 20時) (レス) id: 350a847f52 (このIDを非表示/違反報告)
淋 - 初コメ失礼。とても善い作品ですね、読んでいて楽しく面白いです。普さんの作品経由で来たのですけど、やはり素晴らしい文才です。これからも頑張って下さい、応援します (2018年4月1日 20時) (レス) id: 350a847f52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華の幽霊と普 | 作成日時：2018年3月31日 19時
