第36話 ページ37
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「当然、約束も思い出したんだよね?」
こんなに大きくなって…元から背は高かったけど、と観察していると声を掛けられた。
「思い出せなくても思い出させる顔じゃないですか其れ」
「うふふ」
おー怖い。
「離さないって云う約束ですよね。飛び降りでもしない限りそんな状況はないと思いますけど」
「何言ってるの?」
不思議そうに、子供がどうして血は赤いの、と訊く様に。
きょとんとして太宰さんが首を傾げる。
「絶対に離さないって言ったんだよ? Aと私は運命共同体、夫婦になるんだ」
「……拡大解釈し過ぎでは」
「そんなぁ、私はずっと信じていたのに」
しゅんとして泣く素振りを見せられる。
信じていたと言われると、私が悪いような気になってくる。
「プロポーズではないでしょう」
「Aは私のこと嫌い?」
「嫌いと言いますか……」
知らない。
帰れると云う予感に従って歩いた先で見つけた太宰さん。
触れた異能力を無効化すると言うから、あの時は天井だった床に異能力を向けて発動した。
陽の光が射し込むように、誰かに見つけて貰えるように。
指輪を預けたのは、きっと信じてくれないだろうと思ったからだ。
指輪は私の大切なもの。
其の指輪を持つ人は私の信じる、わたしを信じてくれる人。
自己暗示にも似た形で異能力が発動出来る。
だから、今も指輪を持ってくれていると云うことは、本当に信じてくれていたと云うこと。
「私はずっと会いたかったよ」
「其れは…」
「あの日、どうやってAが消えたのかも調べていた」
「…つまりは、私の異能力についてですか」
先程のいつから気付いていたのか、という質問は此の異能力についてだったのを思い出した。
「先ずはあれだけ言っていた信じることで発動が出来ること」
「はい」
「どうしてAが消えたかは、恐らく_」
材料は僅かだった筈なのに、此の人はスラスラと答えを述べていく。
「……よく分かりましたね」
信じる人の元へ転移すること。
「私たちが出会った場所は再開発で緑溢れる公園になっている。そしてAがマフィアに発見されたと思われる建物は、あの日の建物にそっくりなんだよ」
其れだけで分かるものだろうか。
「朝マフィアから逃げてきたにしても、時間の割に場所が離れすぎているし川に入る理由がない」
嬉しそうに太宰さんは微笑む。
「私を信じて来てくれたんだ」
「……まぁ、そうなりますね」
否定は出来ない。
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時