一生分の幸福 ページ5
今日も今日とて国木田に指摘された箇所を直す
「終わった！」
伸びをした頃にはもう辺りは夕陽に包まれていた
社内には殆ど社員は居らず、キーボードを淡々と打つ国木田のみが残っていた
(も、若しかして…、国木田さんと二人きり！？)
意識し始めると、心臓が一気に高鳴り出した
そう、Aは上司である国木田に密かに想いを寄せているのだ
(これは滅多にない機会！)
バクバクと高鳴る鼓動を感じながら、Aは国木田へそっと近寄る
「あの、国木田さん」
「…ん？A、終わったのか」
国木田は手を止めると、身体ごと此方に向き合った
眼鏡越しの山吹色の瞳と目が合うだけで、口から火が吹き出そうになる
「えっと…、書類の直しが終わりました」
差し出すと、国木田は「嗚呼」と言って書類を受け取る…ーが、その時に国木田の細長い指が自身の手に微かに触れる
「…ッ」
手に熱が集まっていくのを感じながら反射的に手を引くも、国木田は全く気づいていないようだった
(良かった…)
ほっと一息つくと、サッと書類に目を通した国木田が口を開いた
「…ー完全に直したようだな、良くやった」
フッ、と小さな微笑みに、Aの心臓はとくとくと速く鳴っていく
(国木田さんが、笑った…)
この1年間で恐らく1番の幸せだろう
舞い上がりそうな気持ちを押さえて、Aは背筋を伸ばした
「はっ、はい！」
「よし、帰っていいぞ」
くるり、また机に向かう国木田に一礼をして、Aは軽い足取りで帰る支度を始める
「では、国木田さん、お先に…ー」
軽く会釈をして彼の傍を通り過ぎようとしたとき
「A」
不意に名前を呼ばれ、振り向くと同時に何かが飛んできた
急なことにAは驚きながらも反射的に手を伸ばす
「わっ、えっ、ちょっ！」
落としそうになりつつもそれを手にして、見てみれば
「チョコレェト…」
掌には、包装された1粒のチョコレェト
「…俺は甘いものはどうも好かんのだ
確かお前は好きだったろう、くれてやる」
国木田はそう言うと、すぐに仕事を再開した
(…うわ、どうしよう、嬉しすぎる)
甘いものが好きだということを知っていてくれた
今日だけで、Aは一生分の幸福を使い果たした様な気さえしてくる
「あっ、ありがとうございましゅ！」
緊張と興奮で噛んで国木田が吹き出したのは、また今度の話
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輪廻 - 前作も素晴らしい作品でしたが、今回もとっても面白くて、キュンキュンしております！( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )❤︎この小説、もう更新はなされないのでしょうか？とっても面白いので、国木田さんの言葉の続きが気になります！ (2022年5月8日 8時) (
レス) @page12 id: 3d9ac3cda8 (このIDを非表示/違反報告)
ＡＳ(プロフ) - 甘党主義者さん» こんにちは！コメントありがとうございます！前作から…！とっても嬉しいです！ほのぼの恋愛を目指しているので、少しでもゆったりしつつ、きゅんきゅんして下されば幸いです！これからも頑張ります！(´∀｀*) (2018年3月22日 23時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
甘党主義者(プロフ) - こんにちは、読ませていただいています！ 前作から読み始めているんですけど、凄い面白いです(*^^*) これからも更新、楽しみにしています！！ (2018年3月22日 8時) (レス) id: 5924d6346b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：AＳ | 作成日時：2018年3月19日 16時
