Crazy moon 〜宴のハジマリ〜 【浦/島/坂/田/船】

episode.6 ページ6

.






私が変な理由で船の旅に出掛けようなんて友人が知ったらきっと腹を抱えて笑うことだろう。実際、私も子供騙しだと一回思った。だけど私は幼い頃から怖いという感情が嫌いで、怯えて生きるのが嫌だった。


だからこそ、怯えるなんて行動を忘れて一回前に進んでみようという親のいらない思考を受け継いでしまったのだ。いらないといっても捨てられないものだから、しょうがないと言っちゃ、しょうがない。


そんな風に考えながら、仕事を終わらせる。生憎ドレスを着始める時間まではまだまだあるようだ。それがなんだか落ち着かなくて部屋をうろうろと徘徊する。まるで遠足が楽しみで楽しみで仕方がない小学生だ。



そうしているうちに、４時になった。朝起きると招待状が黄緑になっていたが、もう驚くこともできずに迎えの５時に間に合うよう予定をたてた。それぐらいしか朝の記憶はない。


いそいそと慣れないドレスを着る。今日買ってきたばかりのドレスだから、サイズはピッタリだ。バリバリのキャリアウーマンとして生きてきた私はドレスを着るところもないため買っていなかった。


鏡で自分を見てみるといつもより綺麗に見える私がいた。お洒落をする暇があるなら、なんて思いながら日々を過ごしてきたけれどたまにはいいかもしれない。着なれないドレスを着て鏡の前で一回転する私は、モデルにでもなったつもりなのか。



迎えの時間まであと少し。私は何かに引っ張られているかのように船の旅に心が惹かれていった。

episode.7→←episode.5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す