episode.29 ページ27
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「早く食べちゃおうや、うらたさん」
「そうだなぁ…」
嫌になる笑顔を見せるうらたさんは、私の坂田さんとは反対の手首をがっ、と掴む。首元を掴んでいたうらたさんの手が離れ、ほっと息をするのも束の間、今度は手首を痛みつけてきた。
「痛いです、うらたさん」
「‥面白くねぇな、もっと顔を歪ませればいいのに」
(歪んでるのはあなたの顔ですよ)
私は昔から表情で心を表すのが苦手だ。それはずっと変わらなくて、失った友達もしばしば。
「でも、俺は好きやで。その憎たらしい顔」
「誉められたものじゃないわね、その性格」
「肩震わせて怯えとるやつには言われとうないわ」
早く逃げないと殺される。本能が察し、お菓子を取り出そうとする。ここでお菓子を取り出したとしても、彼らは退いてくれるのだろうか。
いや、そんな簡単なゲームではない。
「お菓子なら、ここにある」
「‥‥見せてみろ」
白く透き通ったうらたさんの手にお菓子を詰めた瓶を乗せる。ぎりっと瓶を掴んだ黒い爪によって、瓶は呆気なく割れてしまった。坂田さんはお菓子に興味津々で、チョコレートの包みを急いで開けて口の中に放り込んだ。
「‥甘い」
「だってそれ、チョコレートだもの」
「うらさん、お菓子、持ってたでこの子」
お菓子に目を輝かせた坂田さんを目にして、一度溜め息を吐き、舌打ちをしたうらたさん。四人とも、私か手を離し、ばつが悪そうに顔を背けた…坂田さんを除いて。
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ハゲつるマン@19830617(プロフ) - 雪華さん» すみません、間違えていました、指摘ありがとうございます! これからもこんな作者ですがよろしくお願い致しますね! (2019年1月17日 18時) (レス) id: ca77629a28 (このIDを非表示/違反報告)
雪華(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。ストーリーが面白くて好きです!あと、捕食者って食べる側なので被食者がただしいのではないでしょうか? (2019年1月17日 0時) (レス) id: f84b103640 (このIDを非表示/違反報告)
ハゲつるマン@19830617(プロフ) - ちゃちゃるさん» ありがとうございます! (2018年11月3日 13時) (レス) id: ca77629a28 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃちゃる(プロフ) - 今作もとても面白いです!!続き楽しみにしてます♪ (2018年11月3日 13時) (レス) id: 461b4b0bb6 (このIDを非表示/違反報告)
ハゲつるマン@19830617(プロフ) - 笑笑 ハロウィンナイトは明日ですよ!(あと一時間半) (2018年10月30日 22時) (レス) id: ca77629a28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハゲつるマン@19830617 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年10月23日 22時