episode.21 ページ21
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暗い夜道を歩くなんてはしたないと、親に言われた事がある。だけれど、そんなこともう言ってられるか。今は死ぬかもしれない、一大事なのだ。
どんどん荒くなっていく道から整備されていないと思ったけれど、引き返そうなどと馬鹿な考えは思い付かなかった。私の原動力は、生きたいというただ一つの阿保みたいなものであった。
道が無くなったと思ったとき、目を凝らすと先に家があった。あんまり大きくないわけだが、普通に住めるようで外見も綺麗だった。こんこん、とノックしても反応は返ってこない。大声で呼んでも、あの人達がここにくるのを早めてしまうだけだろう。
「すみませんっ」
私は謝りながら家の中に入って、辺りにお菓子があるか確認した。けれど、どうしても見つからない。2階があるわけだが、寝室とかがあってプライバシーを侵害するのは、と踏み止まった時だった。
「何してるの」
「…っすみません」
誰かは分からないが、口調からしてこの家の人なんだろう。振り向くと、7歳ぐらいの女の子だった。思わずしゃがんでしまい、そのまま話を続ける。
「何してるのって聞いてるの」
「…お、お菓子を拝借しにきました」
「お菓子…それはなんなの?」
随分子供らしくない女の子だった。口調は結構お姉さん、という感じで強め。お菓子の存在を知らないなんて、ほんとに子供なのだろうか。
「んー、クッキーとかチョコレートとか」
「それをあげたら帰ってくれるの?」
「別に貰わなくても帰る…っていうけど貰いたいなって」
苦笑して ごめんね、と謝ると女の子は私を一目見て溜め息をついた。
「どうせ、貰わなかったら居座るくせに」
ぐさりと図星の私に言葉のナイフが突き刺さった。
「…まぁ、いいわ。チョコレートとか持ってくるから、待ってて」
「ついていっても、いいかな?」
「別にいいわよ」
私は嫌な予感を感じ取ったから、直ぐ様女の子についていくようにした。このままロビーに居ては、あの人達が来るようだったから。
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作者名:ハゲつるマン@19830617 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年10月23日 22時