【歌い手】期待して損した。［２］

★ ページ22

ぎゅっと手を握ったままなにも話そうとしないまふくん。

大きな目をこれでもかと言うくらい開いてこちらを見ている。



『あの……どうかされました？』


ま｢……A、だよね？｣




声変えればバレないと思ったのにな。

長い間会ってなかったから覚えていないと思ったのに。


目を逸らしたいのに逸らせない。

手を離そうとしてもかなりの力で握られているため離すことも出来ない。



『……誰ですかそれ、人違いですよきっと。』

ま｢そんなことない、絶対にそうだよ間違えるわけない、、ねぇA……？｣




まふくんの腕を振りはらって逃げてしまおうかとも考えたけどそれすら出来ない私はどんな感情を持っているのだろう。


正直ぐちゃぐちゃでわからない。


バレたくなかった、見つかりたくなかったという感情と見つけてくれた、覚えててくれたという感情が混ざりあって混乱する。



『仮に私がその人だったとして、、あなたはどうするんですか。』


ま｢……今はどうもしないかな。生きていることを知れただけで十分というか。｣



連絡もつかない、身元もわからない、生きているかすらわからなかったから。


ぎこちない笑みを浮かべるまふくん。

本当は泣きたいんだろうな。


泣きたいときに浮かべる笑顔のぎこちなさは変わらないようだ。



その表情を今も覚えている私も大概だが。


こう見るとまふくん髪型とかだいぶ変わったけど中身はそんなに変わっていない。

いや、変わってるか。


前より強くなっている気がする。

泣きじゃくっていたあの頃のまふくんはもういないのだろうか。


まぁもう私が気にすることではない。



『とにかく私はその人ではないので……手を離して頂けますか。』

ま｢やだ、今離したらもうずっと会えない気がする。｣

『だから私はその人じゃないって言ってるじゃないですかっ！』

ま｢俺が間違えるわけないっ……！｣




ずっと探してたんだよAのこと、いなくなったあのときから。

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