【ＨＱ短編集】推しに推されて何が悪い

＊とある夏の日のツッキー ページ49

＊月島side



「ツッキーさぁー！マネージャーと付き合ってるってホント！？」


「ブッッ」



思わずスポドリを吹く。木兎さんが「ズボシ！！」と指を突き付けてきた。



東京での合宿中、自主練なんてする気も無かった僕が練習終わりに未だ体育館にいるのは、この人と。



「なになに〜、マジで？？青春しちゃってんの？？ずるっ」



黒尾さんのせいだ。
　


「…それ、誰から聞いたんですか」



「スガ！！」



「スガかぁ〜そりゃぁ信用性大だな。で、誰なんだい月島クン？」



ニヤニヤと嫌味な顔を僕に向けてくる。手の中のスポドリをその立派なトサカに注いでやろうかと思ったけど、流石に実行には移さなかった。


「別に…誰でも良いでしょう。お二人には関係無いですよね」



タオルで顔を拭くふりをして、二人から顔を逸らす。



けれど、そんなことで引いてくれるほどこの人たちは単純ではない。



「教えてくれても良いじゃんか！」



「……」



「こらこら木兎、あまり深追いしてはいけない。こーゆーときは頭を使わないと。烏野のマネージャーは３人。清水は西谷と田中、それとウチの山本ががっつり守ってるから無しとして、残るは誰と誰だい？」



「！なるほど！谷っちゃんとA！！」



僕が黙っているのを良いことに、黒尾さんと木兎さんは少し離れところで推理し始めた。



全く…本当になんなんだよ、あの人たちは。何がしたいんだ…。



思わずため息をつく。もう一口飲もうと思ってスポドリに口をつけると、もう空になりかけていた。



そういえば、最後に作ってもらったのは夕方前だった。もうそこそこ遅い時間だし、まさか自分が体育館に残ってまで練習するなんて思ってもいなかったから、スポドリを飲み干してしまっていたらしい。



仕方ないと諦めて水筒のキャップを閉めたとき。



「はい」



「え…赤葦さん？」


リエーフと日向にトスを上げてやっていた赤葦さんが、何故か水筒を差し出して立っていた。


「これ、さっきAが届けてくれたんだよ。そろそろツッキーの分が無くなるだろうからって」



良いマネージャーだね、と言って、赤葦さんが僕に水筒を手渡す。



受け取った手のひらに、かさりと何かが触れた。水筒を裏返して確認する。



『自主練がんばれ！』



一言、名前すら書いていないメモを見つけて、思わず頬が緩む。



「…バレバレでしょ」



赤葦さんの呟きは聞こえなかったことにした



＊

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