第五十三話 織田と銀髪さん ページ6
第一印象は『冷淡』。
目の前で一言も発す事無く此方を見てくる銀髪の少女。
否、少女と云う年齢ではきっと無いのだろう。
肩の上位の短い銀髪の髪の毛。
暗く澱んではいるが綺麗であろう夕陽色の瞳。
微かに頸を傾げた彼女の髪飾りである水晶玉が音を鳴らす。
赤髪に無精髭を生やした青年___織田 作之助は隣で笑みを浮かべている太宰をちらりと見た。
「織田作に紹介しようと思って連れてきたんだよ」
太宰は黒い外套を揺らしながらそう云った。
「彼女の名は石川 淳
もうすぐ17歳の女の子だよ」
目の前の彼女はぺこりと社交辞令のように頭を下げる。
『石川 淳と申します
宜しくお願い致します』
固っ苦しい挨拶が今此の場にいないあの丸ぶち眼鏡の男を思い出させる。
淳は感情の無い瞳で織田を見て太宰に視線を移す。
『此の方は・・・・・?』
彼女の問いに太宰は「嗚呼」と頷いた。
「淳 彼の名は織田 作之助
私や親しい者は織田作と呼んでいるよ」
『織田作___』彼女の唇が微かに動く。鈴のような綺麗な声が聞いていて心地善い。
ふ、と表情が柔らかくなった。
『__織田作 さん・・・』
花が綻ぶように淳は笑みを浮かべる。
微かに夕陽色の瞳が輝いた気がした。
夕陽色の瞳に自分の姿が映り込む。
其れはまるで磨かれた硝子や鏡、輝く宝石のようで。
「綺麗だ」
ぼそりと織田の口からそんな言葉が洩れ出た。
目の前で淳は目を丸くした。
『綺麗・・・・・?』
「嗚呼 否 何でもない」
織田は"しまった"と考え、口に手を当てた。
つい、うっかり口から出てしまった。
太宰はそんな織田作を見て悪戯を思い付いた子供のような笑みを浮かべている。
「太宰」と織田が名を呼べば「ははは」と軽く笑い声を上げた。
「あの織田作がうっかり口を滑らすなんて
珍しい事も有るんだねぇ・・・・・」
後から来るであろう坂口の席を空けて三人は取り敢えず椅子に座った。
目の前に琥珀色の酒が入ったグラスが置かれる。
ゆらゆらと揺れるそれに引き寄せられるように淳はグラスを手にした。
グラスが唇に触れ、琥珀色の液体が流れ込む度に色白の喉がこくりこくりと動く。
「年齢的に駄目じゃないか?」そんな問いが織田の口から出る事は無い。
太宰もだが未成年で既に度数の高い酒を呑んでいても織田には止める術が無いのだ。
151人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» いえいえ、大丈夫ですよ。 (2018年5月11日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
無断転載禁止 - 私の勘違いでご迷惑をお掛けしましたすいません (2018年5月1日 7時) (レス) id: ad49824d41 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» アイビスペイントにて描きましたので一応証拠として写真を一時的にあげておきますね。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» 本垢なら「とっちー」という名前のはずですが・・・。 (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» それは私です。本垢か文スト垢かどちらのイラストを見たのかは分かりませんが「雨雫」という名前ですよね? (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨雫 | 作成日時:2017年4月11日 15時