傷付いて欲しくない ページ46
そう俺が尋ねると織田さんは少し考えてから口を開いた。
「俺には、夢があるんだ。どんな夢なのかは詳しくは言えない。だが、その夢を叶える為には人を殺してはいけないと俺は思っている。だから俺は人を殺さない」
「……そうなんですね」
俺はそう相槌をうったあとぼんやりと氷だけ残ったグラスを見つめて呟く。
「夢、か…そんな事一度も考えた事ないな……」
ずっと生きるのに必死で精一杯だったから。
するとそんな俺に織田さんが尋ねてくる。
「桐崎は夢がないのか?」
「ない、と言うかなんと言うか……ただ一度も考えた事ないですね…」
遠慮など無しに聞いてくる織田さんの性格に少し笑みが溢れるのを自覚しながら答える。
そんな俺を織田さんは真っ直ぐに見て真剣に言う。
「夢は持った方がいい。自分にとって大切な目的になるぞ」
「そうなんですね…あの…夢って具体的にどんなものなんでしょう?」
夢と言われてもあんまり想像できなかった俺は恥を忍んでそう尋ねた。
織田さんは暫くの間黙って考えていたかと思うと言葉を選ぶ様にして話始めた。
「具体的に、と言われると難しいな…これは俺の考えなんだが。自分にとってやりたい事なんだと俺は思っている。だから桐崎にとってやりたい事をやれば良いんじゃないか?」
「俺のやりたい事、ですか…」
俺は目を閉じて考える。
俺の…やりたい事……俺は、周りの人が大切だ。誰にも傷付いて欲しくない。
誰にも…誰にも?あぁ、そうか…なら、俺は。
結論が出た俺は目を開けて織田さんに笑いかける。
「俺の夢、分かりました織田さん。ありがとうございました」
「それなら良かった」
そう言う織田さんに目を細める。
この人は根っからの善人なんだろうなと改めて思う。
俺はカクテルの代金を支払い立ち上がる。
「またここに来ていいですか?」
「ああ、勿論だ。念のため連絡先も交換しておくか?」
そう尋ねてくる織田さんに俺は快く頷き交換したあと店を出た。
空には真ん丸な満月。
俺はそんな満月に笑いながら呟いた。
「俺は、もう人殺しはしない…横浜の人々を救い、誰も傷つけない夢を叶えるために…」
そう織田さんの言葉によって出来た夢を叶えるために決意した。
ーー
しばらく更新出来てなくてすみませんでした!!
【桐崎君にとっての周りの印象】
乱歩:唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。
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那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 倉の中の石さん» ありがとうございます!思惑通りに暗い過去と思って頂けてついガッツポーズを仕掛けました(笑)続編頑張りますね!! (2019年7月8日 0時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石 - すごく面白いです。こんなに自然な暗い過去は久しぶりに見ました。続編も頑張ってください。 (2019年7月7日 17時) (レス) id: 873805d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 鶴さん» 読んで頂きありがとうございます!更新頑張りますね!! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@スマホ使用不可で低浮上中(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!まだ推敲中ですががんばりますね!! (2019年7月5日 20時) (レス) id: a29dbc7b52 (このIDを非表示/違反報告)
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