俺の計算外。 ページ19
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その帰り道、少女と赤葦は穏やかな住宅街を静かに歩いていた。二人の手は、しっかりと繋がれている。
不意に赤葦が足を止めた。手を繋いでいる少女はそれに合わせた。横を見て、赤葦の顔を覗く。少女のその目は赤く、腫れぼったかった。
「……A」
「ん?」
少女は微笑み、話の続きを待つ。泣き疲れもあるのだろう。その笑みはとても儚げだった。見るものに、目の前の少女が消えてしまうと錯覚させてしまうような、美しくもあやふやな笑みだ。それに触発され、赤葦は決意を固めた。
「こんなAの傷心中に言うなんて、卑怯だってわかってる……」
赤葦は手を固く握った。開けばおそらく、掌に爪の痕ができているだろう。
「でも、どうしても伝えたいんだ」
──ここまで来た。やっと、やっとだ。この日のために、俺は……
真っ直ぐ、赤葦と少女の視線が交わる。
「俺は、Aが好きだ。愛してる。今回の件で痛感した。もうAを二度とこんな思いにさせたくないんだ。Aを、一番近くで守りたいんだ。幼馴染を超えて彼氏として、俺にその権利をくれないかな……」
赤葦の視界はぼやけ、頬を濡らしながら再びクリアになる。頬は少し赤い。告白を受けることは数え切れない程あったが、するのは人生初だ。
「……はい!」
少女は感極まって涙を流した。二人して頬は赤い。
赤葦としては今すぐにでもキスをしたいところだったが、お互い初めてで路チューは避けたいという思いが勝った。それに何より、少女は森に無理矢理キスされそうで怖い思いをしたのだ。
──Aの心の傷が十二分に癒えるまで待とう。キスは当分先になりそうだな。
赤葦はその確信が持てるまで、気長に待つことにした。
──少し……いや、正直凄く残念だけど、Aに嫌われる方が死んでも嫌だし。……最後の最後にしんじに一矢報いられたってとこか。これは唯一の大きな計算外かな。勿論悪い意味で。
しかし、後に赤葦にとってはもう一つの計算外な出来事が生じる。少女が弓道部を退部し、正式に男子バレー部にマネージャーとして入部することになったことだ。ああ、この計算外は赤葦にとって言わずもがな、良い意味の方である。
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ライア(プロフ) - あああああヤンデレぷまいーーーーーーーーーー(^q^) (2019年7月11日 0時) (レス) id: 22a2268380 (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - ぴよ曜さん» ぴよ曜さん、コメントありがとうございます!なんと、この小説で赤葦推しを生んでしまうとは…!!理想だなんて言ってもらえて光栄です!最後までお読み下さりありがとうございました(*´ー`*) (2017年8月26日 0時) (レス) id: 47f42923ee (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ曜 - この小説のおかげで、赤葦推しになりました!(笑)この小説の赤葦は、私の理想です!!完結おめでとうございます!&更新お疲れ様でした!!! (2017年8月25日 11時) (レス) id: 9123716162 (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - 審神者代理さん» 審神者代理さん、コメントありがとうございます!好みに合えば幸いです!もう赤葦さんの溢れる何でも出来る感に頼りきった作品となってしまいました笑まさにスパダリやあ…(*´∇`*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 47f42923ee (このIDを非表示/違反報告)
審神者代理 - 完結おめでとうございます!やっぱりここの赤葦さんは好みだなぁ…赤葦さんは何でも出来る感がすごいありますよね( `-ω-´) (2017年8月21日 21時) (レス) id: d1c49bf55e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たなぱし | 作成日時:2017年5月28日 1時