君を想う気持ちは誰よりも【センラ】

44 ページ45

｢お兄ちゃんにいいこと教えてあげる。Aが黙る時はね────｣



…Aが黙る時は、都合が悪い時と嘘をつきたくない時。

いつか、そう月奈が言っていたのを思い出す。


(否定すれば都合がいい。やから都合は違う。

ならAは嘘をつきたくなかったってこと？

嘘って何？)

俺といたくないのか、嫌いになったのか。

その問いに対する嘘って？

｢俺といたくなくて、俺が嫌い｣なら本心は｢いたくないわけでも、嫌いなわけでもない｣？


(いや、でも、そうやとしたらなんで別れてなんて…)


｢もうお兄ちゃんは分かってないなぁ。

Aはすごく優しい子だよ。優しすぎるくらい。

それでいてAは臆病でもあるんだよ｣

そう声が聞こえた気がした。


いや、たぶんこれは自分の記憶。

いつか、そう言われたことがあった。


たしか、その言葉の続きは…

｢だからね、助けてあげて。

きっと何かあった時あの子は助けを求められないから。

私はできないからその分、Aを支えてあげて｣

泣きそうな顔で言っていた。


はっとしてAが去っていった方を見る。

(ほんま、不器用やなぁ…

俺は月奈に約束した。絶対幸せにするって。やから)


君が離れたがっていても、君が俺を嫌いにならない限り、絶対離さない。

俺は全然納得してないのに、これで終わりになんてさせない。

45→←43

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す