【文スト】スカーレット・バレット【男主】

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「……ピンピンとは酷いな坊や」



＿＿＿＿不意に、鎖に繋がれた捕虜が顔を上げた。


恐らくは自らの血だろうと思われる赤が飛び散った、ストロベリーブラウンの髪。同色の瞳は闇の中でどこか愉快そうに輝き、同様に血で汚れた顔のまま、彼は片頬で笑う。


20代半ばから後半というところか。若々しく整った顔をしている。


……加えて云うなら、上半身を裸にされ、此方を見上げる彼には、一つとして傷はなかった。鍛え上げられた身体には血の汚れしか見えず、太宰は思わず眉を寄せる。



「……現にピンピンしてるじゃない。姐さんと、その直属の部下達の拷問を受けて無傷とか、お兄さん、何者なのさ」


「だからピンピンはしていない。見てくれ、この顔色の悪さを。青いだろう。いやむしろ青を通り越して白いんじゃないかと思うんだがどうだろう？


聞いてくれ坊や。俺はここに囚われてからずっと続けて拷問を受けているんだが、其処の御嬢さんは一向に手を休めてくれそうになくてな。


……五回ほど全身を解体されたよ。その度に死にたくなった。


まったく、これ迄何度か拷問を受けたことはあるが、ここまでのものは初めてだ。全くポートマフィアを舐めていたらしい」


「あのさお兄さん。僕を坊やって呼ぶのやめてくれるかな。これでももう働ける年だよ……『こういう所(マフィア)』でもね」



楽しげに語る捕虜を見て溜息をつくと、太宰は徐に尾崎に目をやった。


彼女は苛立たしげに頭を振ると、不機嫌も顕に「事実じゃ」と口を開く。



「爪を剥ぎ、指を落とし、それでも何も吐かぬので、皮を剥ぎ、筋肉を削ぎ落とした。ある時は内臓を潰した。


……それでも死なず、その上何も云わぬとくればもう、打つ手もなかろう」


「因みに俺には薬も効かない」



微笑んだ彼の瞳の奥で、闇色の光が瞬く。


……何かを企んでいる目だな、と太宰はごく冷静に其れを分析した。ああ、それにしても腹の立つ捕虜だ……少なくとも尾崎にとっては。



「……成程ね、僕が呼ばれた訳が判ったよ。というか、推理しなくても一目瞭然だ。


痛みが効かず、徹底的に解体した身体が完璧に元に戻る……詰まりそういう異能者って訳だ」


「流石、ポートマフィア首領(ボス)の虎の子だな坊や。その通り、俺は『痛覚無効、及び大怪我に伴う超速再生』の異能力者だ。


そして俺は」




＿＿＿＿君の登場を待っていたんだよ、と。


彼はにこりと、再び笑む。

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