ティーカップの中の嵐 五 ページ7
がりっ、と。奥歯を食いしばり、目の前の彼から何かを噛み砕いたような音がした。
そして背後で、太宰幹部が忍び笑いを漏らす気配。御手並み拝見、と放つ雰囲気が言っている。
成程、中原幹部と仲が悪いわけですよ。
(頭はいいけど、性格は最悪ですね。流石、歴代最年少幹部)
とはいえ。
目の前で、自分が死ねないことに大いに戸惑っている敵構成員も、わたしをそう思ってるんでしょうけど。
「奥歯に仕込んだ毒の味がお好きでしたか?」
「っな、」
「でも残念。あなたが飲んだ紅茶の……角砂糖の中に、解毒剤を仕込んでおきました」
「ぐ……!」
呻く彼を横目にしながら、わたしは静かに手元の資料を捲っていく。殺気が満ちた小さな拷問部屋には、しばらくの間紙の音だけが響いた。
緊張の糸が張り詰め……そして切れそうになった時、わたしは資料を閉じる。
「ブラーさん」
「……な、」
「エドワード・ブラーさん。……あのね、わたし、先刻から気になっていたことがあるんですよ」
何故もっと早く死のうとしなかったんですか?
わたしがそう聞くと、彼は目を見開いて硬直した。
「おかしいと思ってたんですよ。あなた以外の木端構成員たちは状況判断に優れていました。マフィアに見つかった瞬間に、毒を呷って死んだそうです。
どうやらそういう風にマインドコントロールされてきていたようですね。でもあなたはそうしなかった」
それは何故か。
彼だけ、死を選べなかったその理由は。
「あなたの姿は確かにエドワード・ブラーと一致します。
……ですが、あなたはわたしが『ブラーさん』と呼ぶ度に、喉仏を触っていました」
それは嘘をつく時に感じるストレスを行動に置き換えることで現れる、なだめ行動だ。
「あなたの異能はもしかしたら、姿を変化させられるものなのでは?」
「ち、違う、」
「ほらまた嘘。学習して下さい、わたしに嘘は通じません。
……あなたはエドワード・ブラーではない。だとしたら誰なんでしょうか。
マインドコントロールを受けておらず、本人に化けられる人物は……一人しかいませんよね?」
やめろ、と唇が動いた。わたしはただ優雅に嗤う。
これが仕事ですからね、と。
「初めまして、新任の幹部殿。
階級が変われば、聞くことも変わりますね。でもまずは……自己紹介からお願いしましょうか」
411人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時