探すな、見つけろ 三 ページ12
……まあ、其れを口に出したりはしないけれども。
「それで……太宰幹部? 今日は如何してここにいらっしゃったんです? もしかして今日も視察でしょうか?」
「お茶汲みに来た!」
…………。
………………何を云ってるんだこの人は。
「あ、驚いたね? いやあ、君は何を言ってもしても大して興味なさそうにしていたから、どうしたら驚くかなあ、と考えたのだよ」
驚いたを通り越して心臓に悪いです、太宰幹部。
いったい何が可笑しくて、上司にお茶汲みをさせなくてはならないのか。心労で殺す気か。
「今日は丁度いい珈琲豆が手に入ってね。どうせ最初に好意を持たせて仕草や行動の
折角だし新しい部下に私の淹れる珈琲をご馳走しようかと!」
「……たった1回でわたしの手口、殆ど判ってるんじゃないですか。全く形無しですよ」
「興味深く見させて貰ったからねえ」
こぽぽぽぽ、と捕虜室にはとても似合わないような水音が響き、ふんわりと珈琲の香りが辺りに漂う。
はい、どうぞ! と太宰幹部がイイ笑顔でカップを机の上に置いたので、わたしは大人しくパイプ椅子に腰掛けた。
……なんでわたし、幹部と一緒に拷問部屋で一緒に珈琲飲んでるんだろう。
(そ、それに……苦い)
太宰幹部が淹れて下さったのは、無糖のブラック珈琲だ。苦いものが不得手なわたしには最早味が感じられない。
むむむむ、と内心唸りながらカップの中身と睨めっこしていると、太宰幹部が「どうしたんだい?」と笑顔のまま片眉を上げた。
「……真逆、
……それ脅迫ですよ太宰幹部。
「あの……いえ、そういうことでは」
「じゃあ、如何いう事?」
「……わたし、苦いものが苦手なんです。お砂糖と牛乳、入れてもいいですか」
太宰幹部が暫く目を瞬かせてから問うた。「もしかしてAさん、ブラックが飲めないのかい?」
「見た目も年相応に見えないのに、味覚も子供なのだねぇAさん」
「よ……余計なお世話です」
初めて会った時も同輩だと思われたっけ。
童顔なのは認めるけれど、高校生くらいに間違われるのは些か傷つく。
太宰幹部は愉しげに笑うと、「仕方が無いねぇ」と角砂糖を五つ程放り入れてきた。
……一つでいいんですが、とは云えなかった。
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時